生体が病気に罹ったときに認められる変化を総括して症状と言っています。既に罹患した状態でも、次に起こる病気などの前触れであることもあります。かゆみ、しびれ、痛み、吐き気、うずき、汗、肌が乾燥する、肌が黒ずむ等々、自分で自覚できる症状を自覚症状と言い、検査をして解る症状を他覚症状と言っています。
症状はさまざま
1. しびれ | 2. 痛み | 3. 頭痛 | 4. 腹痛 |
5. 発熱 | 6. 炎症 | 7. 悪寒 | 8. 痒み |
9. 肌の黒ずみ | 10. 咳 | 11. 息切れ | 12. 息苦しい |
13. 目眩 | 14. 震え | 15. 動悸・不安 | 16. 呼吸困難 |
17. 水筋肉 | 18. 浮腫 | 19. 腹水 | 20. 耳鳴り |
21. 加齢臭 | 22. 口臭 | 23. 体臭 | 24. 発汗 |
25. 膨満 | 26. 立ちくらみ | 27. 胸焼け | 28. 倦怠感 |
29. 冷や汗 | 30. 肌のくすみ | 31. 赤ら顔 | 32. 頻尿 |
33. 血尿・血便 | 34. 不眠 | 35. 鼻づまり |
この章では、主に、自分で見て感じることができる自覚症状について述べていきます。
症状は警告。そして告知。これを無視すれば、重篤な病気を招きかねません。常日頃から、からだからのメッセージを受け取る受信機を整備し、受け取ったメッセージに正しく対処することが大切です。
症状を自覚したとき、それは、からだからのメッセージが届いたときです。メッセージを正しく受け取り、どう処理するかで以後が変わってきます。
「症状を感じなくする」これが現代医療の対症療法です。それは、専ら薬を用いる方法で、薬の効果が薄れてくればまた元に戻ってしまいます。対症療法とは、表面に現れた種々の症状に対して処置を行い、苦痛を取り除くことを主眼としている療法です。
医師の中には、対症療法を否定する人もいます。「症状は、からだからの訴え、熱が出るのは、熱でからだを治しているのだから薬を飲んで消してしまってはいけない。からだに任せることだ」と。
しかし、これはあまりにも無策。そして間違っています。熱が出るのは熱でからだを治している訳ではありません。薬の否定は良いとしても、症状に対して手立てをしなければ、より重篤になる危険性をつくります。
からだが丈夫で体力のある人なら、症状を放置しても、その場を乗り切ることができるかも知れません。しかし、体力や自己治癒力が低下している人には危険なことです。
症状は、からだの一部に異常がつくられ、その結果として現れるものです。各症状には、その症状をつくる原因が必ずあります。簡単です。症状を無くすには「原因を取り除く」それだけで良いのです。
症状はさまざま。痛みはどのようにつくられるのか。痺れやかゆみは。この根本が解らなければ医療は成り立ちません。
難しい理論は不必要です。全ての症状をつくるのは筋肉の異常。何処かに必ず原因が存在します。原因部位を特定できれば、その筋肉を解すだけ。それで全ての症状を無くすることができます。
デリケートタッチ 指や腕に力を用いないで圧す手法。
ストロングタッチ 指や腕に力を用いないで強く圧する手法。
メルトタッチ 指先でコリが溶けていく手法。
*症状の一部を掲載しています。他のものは「MMS 真昭社」を参照してください。
1. 痺れ
腕や脚あるいは頭部に痺れを感じる。唇に痺れを感じ食べている感覚が麻痺するなど、痺れの場所もいろいろです。
筋肉が収縮した状態が長く続き、弛緩することができなくなった状態をコリと言います。
各処に起こる痺れの原因は、痺れを起こしている部位やその部位まで送られている神経を、筋肉のコリが強く収縮して圧迫したときに起こります。手足の痺れに限っていえば、痺れている直接部位と胸鎖乳突筋の起始部(図3)のコリが原因です。
指を輪ゴムなどで強く巻いて放置すると数分で痺れてきます。筋肉のコリは、輪ゴムで絞め付けるような作用もしているのです。
痺れをつくる原因は、症状の出ている場所とは限りません。むしろ、離れた場所にあることが多く、原因を探るときには、症状のある場所から脳に近い方へと探っていくと見つけやすくなります。
●上腕と手の痺れ
指先が痺れている場合の多くは、胸鎖乳突筋の喉側の起始部(その筋肉の内からだの中心に近い部分)のコリが、神経を圧迫してつくるものです。しかし中には、突き指や指に怪我をして傷めたときなど、その部位が直接固まって痺れをつくっている場合もあります。上腕の痺れは、腕の使い過ぎで上腕の三角筋、上腕三頭筋、上腕二頭筋などにコリをつくっていることが多い。 (図2)
●前腕の痺れ
前腕の痺れも同様で、上腕から前腕に痺れている場合は、上腕から解していく必要があります。前腕だけの場合は、前腕自身のことが多い。前腕と指先が痺れている場合には、まず、胸鎖乳突筋を解し、前腕、指と順を追って解していくことです。
●脚の痺れ
脚の大腿内側の痺れは、股関節のコリに起因し、外側の痺れは、外側広筋、中殿筋のコリが原因の場合が多い。(図1,2)
足先の痺れは、股関節、中殿筋、支帯、踝周り、長趾伸筋(図7)のコリが起因し、胸鎖乳突筋の起始部のコリも関係しています。
●顔面神経痛の痺れ
顔面神経痛などの痺れは、胸鎖乳突筋がつくっている場合が多く、それに加えて頬筋、咬筋などのコリが、顔面神経、下顎神経、眼窩神経を圧迫し歪みをつくります。(図5)
2. 痛み
痛みをつくるものは何なのでしょうか?(切りキズの痛みは別)
筋肉の中には、血管や神経、リンパ管などが含まれています。その筋肉にコリをつくると、コリの強い緊張が神経を圧迫し、あるいは屈曲させるなどして痛みをつくっていきます。
また、一種の頭痛のように、血管が膨張し、それが隣接する神経に触れ痛みをつくる場合もあります。
痺れは、痛みの初期段階のことが多いのですが、痛みは、コリをつくった硬い筋肉同士の間に神経が挟まれ圧迫されたときに生じます。また、その挟まれた神経が何らかの変形を加えられたときにもつくられます。
硬い板の上に指を乗せて上から圧すると痛みが生じます。しかし、軟らかいスポンジのようなものに指を乗せて圧されても痛みは起きません。つまり、ただ筋肉にコリをつくっただけでは痛みは起きません。
ある部位を圧したとき痛みが生じるのは、その奥に硬い部分があるということです。常時痛は、神経が、硬い筋肉と硬い筋肉の間に挟まれ、周りの筋肉の収縮が神経を圧迫してつくっていきます。
小動脈や細動脈を筋肉のコリが圧迫し狭めると、その先の血流は速くなります。流れが速く圧力のある血液が毛細血管に流れていくと、血管は太く膨張します。膨張した血管が隣接する神経を圧迫して痛みをつくります。
いずれにしても、痛みは筋肉のコリが関係しています。痛みを取るには、まずコリをつくっている筋肉を解すことです。
●痛みには名称がある
痛みは起こる部位によって、頭痛、歯痛、腹痛、腰痛、膝痛、月経痛などと特定の名称が付いています。
痛みの症状の幾つかを取り上げ、その原因と治療法を探っていきましよう。
3. 頭痛
頭痛の原因はいくつかあげられます。
①頸の筋肉が収縮緊張し、総頸動脈を圧迫して痛みをつくるもの。
②頭部の筋肉が収縮緊張し、筋肉の中にある神経を圧迫して痛みをつくるもの。
③脳の髄液が循環されなくなって、脳室が膨張し、神経を圧迫して痛みをつくるもの。水頭症がこれにあたる。
④クモ膜下脳胞症がつくる頭痛。クモ膜下に髄液が溜まり頭蓋骨を膨らませてつくるもの。
⑤頭蓋と頭皮の間にリンパ液が溜まり、膨張し神経を圧迫するもの。
⑥血管が何らかの理由で狭窄が起こり、異常に膨らみ神経を圧迫するもの。
⑦頸筋の後ろにある頭半棘筋(とうはんきょくきん)(図6)を固め、頭が「ボォー」とするなど頭の芯に痛みを感じるもの。
⑧眼球や眼球の深部を固め頭痛を起こすもの。
以上のような原因が考えられます。以下にそれぞれの頭痛について説明していきます。
①最も多い頭痛。左右の総頸動脈の周囲の筋肉が固まり、動脈を圧迫し血管を狭めてしまうと、その先の血流は速くなり、細い血管に血液が急激に流れ血管を膨張させます。その血管が神経を圧迫して痛みをつくります。(図4)
②頭蓋と頭皮の間にある筋肉が固まりコリをつくった状態のとき血流が少し強く流れて血管が膨張し神経を圧迫し痛みをつくります。この筋肉の層は厚いものではないので、血管がほんの少し膨張しただけでも逃げ場がないために直ぐに神経に触り痛みがつくられます。頭皮に血管が浮き出ている場合がこの頭痛です。
③ 脳には、脳室という部屋が四つあり、その部屋に脳が傷つかないように水に浸され収納されています。この水を脳脊髄液と言い、脳脊髄液は常に循環されています。つまり入ってきた分だけ外に排泄され静脈を通して元に戻っていきます。しかし、頸の根本の筋肉にコリができると、それが静脈を圧迫してしまい、圧力のない脳脊髄液は流れなくなります。だが新しい脳脊髄液はつくられ、脳室内に送り込まれます。脳室内には脳髄液が溜まり、その圧力で脳室は膨張し、それが進むと頭蓋を外に圧し出しだします。そして外側にある神経を圧迫することになり痛みがつくられます。脳脊髄液の流れを止めている頸のコリを取ればほとんどが解決されます。この状態が深刻になったものが水頭症です。
④ 偏頭痛、慢性頭痛の原因になっています。割と多い頭痛のタイプです。この頭痛を取ろうと薬を飲んでも痛みを取ることはできません。この症状の特徴は、頭を触ったときに水が溜まった「ブヨブヨ」感があります。
頭蓋と頭皮の間に無数の血管、リンパ管が通っています。その内の静脈、リンパ管の流れが阻害され、水が溜まり膨張して神経を圧迫して痛みをつくものです。治療法は③と同様、頸筋の筋肉のコリを取ることです。更に頭蓋と頭皮の間にある筋肉のコリも取って流れを良くする必要があります。
⑤ 頭部の動静脈の一部分が異常に膨らんで痛みをつくるものです。血管の脆い部分が膨らむのと、膨らんでいる血管の先が詰まった時に起こります。つまり、軟らかいホースの先に栓をするとその手前の部分が膨らみます。その現症が頭部で起こります。
頭蓋と頭皮の間は数ミリしかありません。血管が膨張したときにこれを吸収することができないのです。このタイプの頭痛は存外と多い。
膨張した血管の先のコリを取り、血液の流れを良くすれば頭痛は解決します。
⑥ 頸筋の後側の頭半棘筋や頭板状筋(図6)にコリをつくり、頭重感を伴う頭痛をつくるものです。頭がすっきりしないというのもこの部位のコリが原因です。
このコリは瘤(こぶ)のように硬く盛り上がっています。一見骨が隆起したように見えるので骨だと思っている人が少なくありません。コリを取っていけば瘤状の隆起は無くなり、頭痛も取れ頭もすっきりします。
頭痛は単に痛む場合と、いろいろな病気によってつくり出される症状の場合があります。
薬を飲んで痛みを感じなくさせるという姑息療法を行うと、病気の気配を消してしまうことになります。①の頭痛のような場合、頸筋のコリを取って解決しておけば、脳梗塞、脳血栓、脳出血、くも膜下出血などの脳卒中を防ぐことができます。
また頸の後部を固め脳への血流を阻害させていると、頭が「ボォ-」とする感覚をつくり痛みもつくります。流れの悪くなった血液が溜まっていけば脳腫瘍などの原因にもなります。
頭痛を治すには、その原因を取り除くこと。薬を飲むなどの姑息療法を避けることです。
4. 腹痛
腹痛は、胃痛、腸痛、便秘痛、下痢痛、膀胱炎、子宮内膜症炎、月経痛などさまざまです。概ね痛みのある部位が原因しています。
その部位を探し解すことですが、他の病気の原因も含んでいることもあるので注意が必要です。
西洋医学は、腹痛を「内蔵性腹痛」、「体性痛」、「関連痛」、「心因性腹痛」などに分けています。
ともかく腹痛は、体内で発生した何らかの異常の警報とも言える自覚反応です。これを、薬で神経を麻痺させ痛感を無くすようなことは避け、腹痛をつくっている原因をまず探し出すことです。
腹痛と言っても、鳩尾の下から股間までの間には、さまざまな病気をつくる部位があります。
鳩尾下なら、息切れや心房細動、不整脈、逆流性食道炎などをつくり、その下部の痛みなら膵臓(すいぞう)の病気が潜んでいます。
左上なら、胃炎、胃ガンなどがあり、右なら肝臓炎や肝硬変、肝炎、肝機能障害をつくります。
中間なら、大腸や小腸、十二指腸炎などの症状や病気、下腹には便秘や膀胱炎、月経痛、筋腫、子宮内膜炎、卵巣炎などとさまざまです。(図8)腹痛は、痛みのつくっている部位をまず解していくことです。例えば、大腸の憩室痛などは、かなりの痛みをつくりますが、症状のある部分を解していけば痛みが無くなり、しかも、憩室(大腸の一部が膨らんで部屋のようなものをつくる様)も改善されていきます。
大腸ガンなどによる腹痛も、痛みのある部位を解していけば痛みが消えてきます。そして、それがガンの退縮につながっていきます。
腸捻転(ちょうねんてん)は、その部位と周りに気を送りながら、軽く圧し解していくと捻れが取れてきます。
月経痛は、下腹を解し、部を解し、血行を良くしていけば、症状は消えていきます。
よく「胃が痛くて」と訴える人の多くは、鳩尾下の腹直筋のコリが原因ですが、気を送り二方向を用い、下部にずらすようにしていくとコリが解れてきます。二方向とは、同時に二つの方向性を持つ圧し方です。(詳しくは「筋肉の使い方育て方」真昭社を参照ください)この他にもMMSの施術では、三方向、多方向という圧し方があり、それに気を加えて行う施術法があります。
5. 発熱
よく炎症している部位に触れ、「発熱」と勘違いする場合があります。発熱は、体温の上昇が伴っています。
「発熱は、さまざまな病気の前触れでもあるので、薬などを飲んで抑えてしまうのは良くありません」と、尤もらしい事を言う人がいます。ただ、病気と症状を混同しないことです。発熱は胸鎖乳突筋のコリが原因です。それを解せばな熱は下がります。
古くから、熱が出れば冷たいもので冷やすという方法が取られてきました。現代の医療現場でもアイシング(氷で冷やす)が用いられています。この姑息な方法は、何千年と変わってはいません。(姑息というのは、根本的に解決するのではなく、その場一時的に間に合わせることです。姑息療法とは、その場をつくろう一時的な療法をさし、根本療法ではありません)
何故発熱するのか?長い人類の歴史の中で解き明かされていません。
熱が出れば「冷やす」、また「解熱剤を飲む」という安易な方法しかありません。
●発熱の原因
発熱は、多くの場合、頸にある胸鎖乳突筋(図3,4)のコリが総頸動脈を圧迫して、血液の流れを妨げたときに発症します。頭痛の原因部位とほぼ同じ位置になります。
ときには、腹部の病気によって発熱するケースもありますが、それは腹部の異常や痛みによって、胸鎖乳突筋が固まり発熱をつくります。
例えば、歯に痛みがあるときも発熱しますが、これも歯の痛みが直接の原因ではなく、歯の痛みによって胸鎖乳突筋を固めるからです。故に歯の痛みを取り、胸鎖乳突筋のコリを取れば熱は下がってきます。歯痛は概ね腫れた歯肉解せば痛みは解消できます。
しかし、胸鎖乳突筋を固めると必ず発熱するかというとそうではありません。単に胸鎖乳突筋にコリをつくっただけでは発熱しません。脳への血流を妨げる部位にコリがつくられた場合発熱するのです。
血液の循環が体温をつくっていきます。血液の流れていない部位は冷たくなります。
脳への血流は絶対的なものです。故に、常に自動調節機能(自律神経)が働き血流を保とうとします。しかし、胸鎖乳突筋などのコリによって血管が狭められ血行が悪くなっている場合、血液を無理やりでも通さなくてはならなくなります。それには、かなりのエネルギーを必要とします。例えて言えば、一生懸命力を入れて息張っているようなものです。それによって多量の血液がからだを循環することになり体温が上がっていきます。
発熱は「筋肉を動かすから」と言う学者がいます。それは間違いです。筋肉を動かすことで血液の流れが良くなり体温は上昇したとしても、筋肉の動きを止めれば熱は引いていきます。発熱した場合は、筋肉を静止させても下がりません。
発熱している状態は、平静時でも高熱を発しています。筋肉の動きには関係ありません。
血液は、およそ17~18秒で全身を循環します。全身への血液循環は正常でも、胸鎖乳突筋の一部を固めると、脳への血流が悪くなります。しかし、その部分だけに強い圧力をかけて流すわけにはいきません。そこで、正常である全身の血液の流れまでもアップさせて、脳への血流を良くしようとする働きが起こります。そのために大量の血液が全身を循環することになって体温が上がっていくのです。
発熱をつくる原因は他にもあります。胸鎖乳突筋の中に寒暖をキャッチするセンサー(図4)があると考えていますが、そのセンサーを胸鎖乳突筋のコリが圧迫するとセンサー機能が狂ってしまい、体温は正常な状態なのに「寒い」と間違った情報が伝達され、それを受けて自動調節機能は暖かくしようと、大量に血液を循環させて体温を上げていきます。
発熱の原因は胸鎖乳突筋のコリ。それを解せば数分で平熱になります。
●アイシングは最悪
筋肉は、氷や冷水で冷やすと冷たさに反応し収縮します。それを長い時間続けると、筋肉は元の状態に戻らず収縮したままの状態、つまりコリがつくられます。
首筋や脇の下にアイシングを行うと、胸鎖乳突筋が硬く固まってしまいます。固まれば、また、発熱することになります。それだけではありません。そのために慢性頭痛をつくり、腕や手の痺れや痛みなどの障害を引き起こします。麻痺してしまう場合もあります。
発熱した際に、単純に「冷やす」という愚かな行為は避けるべきです。むしろ症状を悪化させてしまいます。
例1 東京都在住 30代の女性
彼女は、転倒事故で頭を打ち意識が無くなりました。直ぐに病院に担ぎ込まれ、脳内出血を確認する意味で?左前頂骨を外す手術が行われました。手術後、意識が戻らず40度を超す高熱を発していました。その熱を下げるために、頭部、頸部、脇の下、脇腹にアイシングが施されました。それが60日ほど続きました。
病院では手の施しようがなく1ヶ月経った頃、藁をも掴む心境からでしょうか、家族から、わたしに施術の要請がきました。そして、週一回のペースで、彼女の施術をすることになりました。
わたしが病院に行ったとき、彼女はアイシングで固められていました。高熱だからという理由です。それを外し、5,6分胸鎖乳突筋を解すと直ぐに平熱に戻りましたが、10分もするとまた熱が出てくる。と、いう繰り返し状態でした。何度か繰り返した後、体温が安定したところで麻痺したからだを解して帰ってくる。そのようなことが何回も続きました。
そして、わたしが外したアイスパックを、またナースがしっかりと首筋や脇の下に当てがってアイシングをしていく。と、いった状況でした。
「アイシングしているとからだが固まり、後に意識が回復しても動くことができなくなります」と家族には伝えていましたが、それを病院に告げたのかどうか定かではありません。週1回の施術では、アイシングによる硬直は取れず、結局極度な硬直状態をつくり上げました。
その後転院し、地方のリハビリ専門の病院に移りました。わたしは遠方で行くことができず、2ヶ月ほど施術の中断がありました。
再度転院し近くのリハビリ専門病院に移ったのを機に、施術を再開しました。その間、どちらの病院でも、アイシングが施されていました。
問題なのは、熱も無いのに、熱が出てはいけないから先にアイシングをして置くという理由で続けられたことです。
アイシングを外し、熱を下げても、またアイシングをされれば元の木阿弥になってしまいます。この悪循環を断ち切るためには、家族から病院側に「アイシングを中止してください」と言ってもらうしかありません。病人やその家族は、病人に良くしてもらいたい一心から、医師やナースに嫌われないように気を配ります。言い出し難かったようですが、事本人のため、病院に対して「高熱のときのみにアイシングをする。それ以外は外す。」このことを言ってもらう約束をしました。その後、アイシングが中止され徐々に発熱しなくなりました。
熱を下げるために頸筋にアイシングをすると、一時的に冷やされるので熱は下がりますが、冷やすことによって胸鎖乳突筋を固めてしまうので、アイシングを外せば、また、発熱させてしまうことになります。そのためにアイシングを外せなくなってしまうのです。病院でのアイシングは、発熱を継続させるためのものなのです。
胸鎖乳突筋のコリを取れば直ぐに解熱します。高熱の場合、1回では無理なときもありますが、数回行えば発熱しなくなります。
その後、彼女は、徐々に意識が戻り、瞼を動かすことや指先を動かすことの表現ができるようになってきました。しかし、長期間のアイシングが体中の筋肉を固めたため、眼を開けること、手足を動かすこともできない状態でした。それを、開眼させ、手足を動かせるようにし、言葉もしゃべれるようにしてきました。
リハビリ専門病院を退院後、週2回わたしのところで施術をするようになり、現在では、四肢を動かせるようになりました。また、記憶力の低下もあったのですが、それも徐々に無くなり、思考力、暗記力、意志力も出て普通の状態になりました。左手はスワンネック(白鳥の首のように曲がっているところから付けられた)ですが、右手はピアノを弾くこともできます。軽い歩行もできるようになりました。
ここまでに3年近い年月を要しました。アイシングで固めていなかったら、もっと早い回復が望めたことは確かです。
不遜ないい方になりますが、わたしの存在が無かったなら、熱を下げるという簡単なことができず、また、意識を回復させることもできずに、植物人間をつくっていたと思われます。
例2 埼玉県在住 30代男性
この方は、学校からの帰りに車にひき逃げされ、意識不明で救急病院に入院し治療を受けました。やはり高熱を発しアイシングを施されたが熱が下がらず、氷を張った浴槽に浸からせ熱を下げることをしたそうです。それを1週間も続けられたようです。その結果、全身の筋肉が固まり動かすことができなくなりました。
わたしの所へきたときには、四肢が動かず車椅子に乗り、言語障害があって言葉は他人には理解不能でした。
まずは、言語障害を取りました。それは比較的早く直すことができましたが、手を自由に動くようになるまで2年ほどの時間を費やしました。その時間を掛けても脚は満足には動かず車椅子に頼るしかありません。でも、自分で寝ることや、小用もできるようになりました。
この例でも、熱を下げるために乱暴な治療が施されました。そのために彼の人生に大きな負担がつくられました。
6. 炎症
同じ熱を発するのでも、体温を上げる発熱と一部位に熱を発する炎症では原因と成り立ちが異なってきます。
捻挫や打ち身などの炎症には二種類考えられます。
1 原因である部位が、衝撃や極度の刺激、筋肉の異常収縮、虫刺されなどによって筋肉が収縮すると、その中にある血管を圧し潰し、血液が循環しなくなります。詰まった血管の先に血液を流し込もうと、血圧が上がり血流は急激となりますが、スムースに流れないために毛細血管が膨張し、多量の血液で発熱します。
2 異常な収縮をした筋肉が、血管を圧し潰すことは同じですが、その圧し潰されたことによって、血液が先に流れなくなり、毛細血管は膨れ上がり膨張します。つまり腫れ上がり、多量の血液のために発熱します。ゴム風船の中間を潰して息を吹き込めば、その手前の部分だけが瘤状に膨れてきます。そのような状態と言えます。
以上が炎症の起きる理由です。それを冷やせば、筋肉が膨張し拡大したまま硬くなります。その硬くなった筋肉が血管を圧し潰せば血液の流れも少なくなって熱も下がります。しかし、腫れ上がった筋肉がそのまま小さくなっているので、筋肉は硬く固まってしまいます。
それを繰り返すと、筋肉は固まったままとなり、その部位には血液が流れ難くなります。また、神経も同様に圧迫され麻痺していきます。血液が流れてこなくなった細胞は、さまざまな不具合をつくっていきます。痛みが無くなったから「治った」と言うのは間違いで、単に神経が麻痺しているだけです。
炎症は、その炎症している部位の筋肉の緊張が原因です。血管を圧迫し狭め、あるいは圧し潰しているだけのことなので、その筋肉を解せば炎症は消えていきます。
捻挫や打ち身などで発熱している場合でも、単に筋肉が硬く固まって炎症をつくっているのです。
捻挫や打ち身の瞬間、本能は、骨折や筋肉の破損を逃れようと、筋肉を固めてガードします。その緊張が強いあまり後に弛緩せずに固まって硬くなってしまった状態が、捻挫や打ち身です。
硬く固まった筋肉でも、しっかりとした技術 を持って施術すれば、解れて軟らかくなります。しかし、直ぐにまた硬くなります。筋肉は、前の状態に戻ろうとする働きがあるからです。この働きは筋肉の固まりの程度に比例します。
固まったら解し軟らかくする、また固まったらそれも解すということを、何回か繰り返していくと正常な筋肉になり、炎症は無くなってきます。
7. 悪寒
発熱すると悪寒が伴います。熱があるのに何故寒いのでしょうか?
胸鎖乳突筋が固まり脳への血流が不足すると、何とか血液を流そうと血量が増大するため、胸鎖乳突筋の部分が発熱し、頭部も発熱します。
胸鎖乳突筋の温度をキャッチするセンサー部分(図4)も熱くなります。センサーは「熱い」と判断し、自動調節機能の働きから、細動脈から毛細血管につながる部分にある弁を閉じ、血量を調整し、体温を下げていきます。体温は下がっているので寒いと感じることになります。しかし、固まって自由の利かない胸鎖乳突筋の体温調整する部位は、依然として体温を下げる働きをするために、頸から上の頭部は熱く、その下は冷えてくることになります。
脇の下に体温計を挟んで体温を測ると、体温はむしろ下がっているのに、頭部は異常に熱い状態になります。このときに寒気が起こります。全身の体温が上昇しているときには、寒気は起こりません。
全ては、胸鎖乳突筋のコリが原因。コリを取ると、頭部の温度は下がり、悪寒が無くなり、全身の体温も正常になります。
8. 痒み
血行不良や急に血液循環が良くなると痒みが起こります。また虫刺されやかぶれ、蕁麻疹などによっても痒みが出てきます。
虫刺されは、その刺激で刺された部分の筋肉が緊張し固まり毛細血管を潰します。しかし、血液は流れ込むので血管は膨張し腫れ上がり痒くなります。痛みの前の症状です。炎症し腫れ上がっている筋肉を解せば痒みは消えていきます。
皮膚への血行が悪くなるとやはり痒みが出てきます。「血行不良何とかしてくれ」という訴えでもあり、筋肉と真皮の部分の血流が悪くなっているからです。このコリ