筋肉を知ろう

筋肉、血脈、神経

「コリ」は、筋肉が固まり自由がきかなくなりなってつくられていくものですが、このコリが多くの症状や病気の原因である。というのは私の長年かけて作り上げた結論です。

人間の身体は全て筋肉で作られているといっても過言ではありません。人間の身体を網の目のようにめぐっている血管も筋肉で作られています。この筋肉が、多種の条件が加わるとコリをつくります。

「コリ」がなぜ病気をつくるのか?

コリをつくっている筋肉は収縮し硬くなっています。その中に含まれている血管や神経やリンパ管は圧しつぶされたような状態になります。

血管をつぶせば血液が流れにくくなります。完全に潰れてしまえば勿論流れなくなくなります。神経をつぶせば、脳や他の器官に正しい情報が伝わらなくなり、身体全体のメカニックが狂ってきます。それよりまずその部分は麻痺し感覚を感じることができなくなります。その他にも手や足が自由に動かなくなる、といった障害が出てきます。

血管がつまり、血液が流れなくなると、細胞は衰えあるいは壊死し、神経も痩せ衰えて、老化して細くなってきます。また硬くなって自由に動かなくなってきます。

リンパ管をつぶせば、正しい免疫反応が働かなくなります。また浮腫などを起こしていきます。

筋肉、神経と病気の関係

筋肉は大小合わせて400種以上あります。その多くには名前が付けられています。私の医学を修得するには、それらの筋肉の名前を全部覚えなくてはならないのか。決してそのようなことはありません。筋肉の名前を知らなくても、病気を治すことには問題がありません。名前を覚えることは重要ではありませんが、人に説明する際に、名前がわからないと不便です。また記録するときには名称が分からないと記録しにくいものです。私はその程度に考えています。ですから覚えられなかったら、常に手元に筋肉図を置いておけばよい話です。

ではその筋肉図を参考に、その筋肉がどんな病気を作り、障害をもたらしていくのか、またその裏に隠されている、神経や血脈とどう関っていくのかを勉強していきましょう。

まず具体的な説明に入る前に、いくつかのことを覚えてください。

1 痛みがある場合、筋肉が神経を圧しつぶして痛みをつくっています。しかし時には違う理由で痛みをつくっている場合があるので、決めつけてはいけません。

2 ある部位の位置から、心臓より遠い部分が痩せてきている場合には、血管をつぶして血流を妨げています。

三 肌が黒ずんでいたり、カサカサしていたら、血管が詰まっています。多くの場合、毛細血管が詰まっていると考えたらいいでしょう。腎臓の影響もあります。

4 イボがある場合も血流が悪い為です。

5 当然、指で圧した時に、痛みがあるはずの部処に痛みのない場合は、末梢神経が麻痺しています。

6 指が変形している場合は、その部分に至る神経が犯されていることがあります。

7 爪が黒ずんでいたり、変形している場合は、血流が阻害されています。

多くの場合、身体の表面にその状態が現れています。良く観察することと、触れて触角を感じることが大切です。

つまり、見診と触診といえるでしょう。

筋肉と病気

まず頭部から下に下がって学んでいきましょう。

鼻根筋(びこんきん)

頭痛をもたらします。目にも影響します。

上唇鼻翼挙筋(じょうしんびよくきょきん)

鼻詰まり、頭痛を起こします。

眼輪筋(がんりんきん)

目の動きを悪くし、斜視、近眼、乱視、老眼をつくります。

上唇挙筋(じょうしんきょきん)

視力を衰えさせます。瞼が重いといったものにも影響があります。鼻の通りも悪くします。

大頬骨筋(だいきょうこっきん)

上唇挙筋と同じ障害がありますが、それに加えて、口を大きく開けるのが困難になってきます。また言語障害にも影響しています。さらに顔面神経痛なども起こります。

口輪筋(こうりんきん)

唇が切れてきたり、乾いてカサカサになったりします。

口角下制筋(こうかくかせいきん)

言語障害や唾液の出が悪くなるなどの障害があります。

後頭筋(こうとうきん)

頭痛、めまい、脳腫瘍なども考えられます。

後耳介筋(こうじかいきん)

頭痛、めまい、鼻の通りを悪くします。

胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん)

脳障害、偏頭痛、頭痛、めまいなどを起こし、また視力もおちます。ここには外側浅頸(がいそくせんけい)静脈が通っていて、コリをもつと、この静脈が圧迫し、血液が戻ってこないので、血流が悪くなり、脳の働きが悪くなります。

耳の後ろから、咽下までの長い筋肉です。浅頸リンパ節もあり、これがコリとなっている場合が多くあります。

心臓病、狭心症、不整脈、強直性脊椎症(きょうちょくせいせきついしょう)などの原因ともなります。

頭半棘筋(とうはんきょくきん)

頭痛、偏頭痛、などをおこします。

頭半状筋(とうはんじょうきん)

ここが凝ってくると頭が重くなってきます。やる気がなくなってもきます。またここは延髄から始まった、左右十八本の頸(けい)神経(しんけい)叢(そう)が脊柱より出ています。この神経を圧迫するので、脳への情報をもたらす機能が衰えます。片寄ったものは頚椎ヘルニアをつくります。

僧帽筋(そうぼうきん)

いわゆる肩コリを感じるところです。腕の動きが悪くなり、頭痛、吐き気、視力の減退になります。神経が一本走っていますが、首の付け根で固めてしまうと、肩凝りを感じられなくなります。

肩甲挙筋(けんこうきょきん)

ここが凝ると背中で痛みを感じる場合があります。背中が痛いといわれたときには、まずこの筋肉を和らげることからはじめると良いでしょう。

胸骨甲状筋(きょうこつこうじょうきん)

ホルモンの分泌バランスを崩します。また声帯ともつながっていますので、ここが張ると、声も出しにくくなります。

肩甲舌骨筋(けんこうぜっこつきん)

肩甲骨の痛み、腕の痺れや、関節の痛み、リウマチなどの病気を作ります。ここには総頸動脈と上腕動脈との分岐があり、大変重要な部分です。高血圧をつくる場所でもあります。

広頚筋(こうけいきん)

ここが凝ると上を向くのが不自由になります。また総頸動脈も圧迫し、血流を阻害していきますので、脳のあらゆる病気の原因にもなります。また内頸静脈や太いリンパ節もあり重要な部分です。

肩甲棘(けんこうきょく)

ここが凝ると肩をあげると痛みが走ります。つまり上げにくくもなります。

三角筋(さんかくきん)

腕を前に回しにくくなり、自由な動きを奪います。神経も腕の四本のうちの一本から枝分かれして、数本の枝のように出ています。この神経を腋窩(えきか)神経といいます。

棘下筋(きょくかきん)

腕が上に上がらなくなります。

小胸筋(しょうきょうきん)

五十肩などの原因です。棘下筋(きょくかきん)と同様、腕が上がらなくなります。また喘息などの原因となります。

大胸筋(だいきょうきん)

心筋梗塞、狭心症といった心臓病の原因もつくります。また喘息も大いに影響します。この下には、心臓、肺があります。

前鋸筋(ぜんきょきん)

五十肩、腕が上に上がらなくなります。

上腕二頭筋(じょうわんにとうきん)

腕を自由に動かすための重要な筋肉です。腕がやせ衰えたり、痺れたり、リウマチなどはこの下にある、上腕動脈をつぶして血流を阻害して起こります。

強く固めてしまうと、握力も落ちてきます。

上腕三等筋(じょうわんさんとうきん)

この筋肉も上腕二頭筋と同様の病気や症状が起きます。四本の神経が走っています。燒骨(とうこつ)神経といいます。神経を圧迫していた場合、感覚がなくなり、腕の動きを悪くします。

烏口腕筋(うこうわんきん)

ここには静脈が通っています。ここが固まると血液の流れが悪くなります。リンパ節も多くあり、免疫の狂いも起きてきます。

上腕筋(じょうわんきん)

指の自由な動きを奪います。握力の低下、肘関節の痛みなどもつくります。

腕燒骨筋(わんとうこっきん)

肘の痛み、テニスエルボー、親指系の動きを悪くします。

長燒側手根伸筋(ちょうとうそくしゅこんしんきん)

親指、人差し指系の動きをつくっています。固まれば、動かなくなります。やや内側には動脈が通っています。手が痩せてくるのは、ここの凝りが原因です。

円回内筋(えんかいないきん)

肘から先の腕を内側に使うときの筋肉です。ここが固まると、手を内側に回したときに痛みがはしります。痛みがないものでも、回しにくくなったときにはこの筋肉が原因しています。

短燒側手根伸筋(たんとうそくしゅこんしんきん)

この筋肉も長燒側手根伸筋(ちょうとうそくしゅこんしんきん)と同様です。

尺側手根伸筋 小指、薬指の伸ばすときの動きを支配しています。小指や薬指が痩せてくるのはここが原因です。

毛細血管は、無数に走っています。このどの部分の血管でも血流を阻害すれば、手の動きや、皮膚の色や艶、またはしみを作り、ひどくなれば、痺れや、痛み、関節が膨らんだりしてきます。

ここにも枝分かれした神経が五,六本走っています。尺骨(しゃくこつ)神経といいます。その上の肘側にも神経が走っていて、正中神経という名で呼ばれています。

尺側手根屈筋(しゃくそくしゅこんくっきん)

これも尺側手根伸筋と同様です。小指と薬指の曲げるときに使う筋肉で、握力の低下や痺れなどが起きてきます。

長母指外転筋(ちょうぼしがいてんきん)

親指を外側に曲げるときに使う筋肉ですが、固まると、外に回すことができなくなり、そして根元に痛みが走ります。

短母指伸筋(たんぼししんきん)

親指を伸ばすときに使う筋肉です。親指を伸ばしたときに痛みが走る場合にはここの筋肉にコリがあります。

小指外転筋(しょうしがいてんきん)

小指を回すときの筋肉で、ここが固まると、小指の根元に痛みが走ります。

手の甲と指一本、一本に神経が走っています。冷え性などをもっている人の場合、指の筋肉も固まっています。固まりが取れ、神経が生きてくると、指の感覚が戻ってきます。

大円筋(だいえんきん)

ここの部分のコリが直接何の病気をもたらすかは、私の知識の中にはありませんが、脊柱から伸びた神経が走っている場所です。この神経の働きを悪くすることになるので、固まっているような場合、取っておく必要があります。

広背筋(こうはいきん)

大円筋と同様です。

胸腰筋膜(きょうようきんまく)

ここが固まってくると、背中に痛みが出たり、座るのが苦痛になってきます。この下には脊柱起立筋があり重要な部位です。

下後鋸筋(かこうきょきん)

ここも大円筋と同様です。腎機能が落ちてきます。腎臓を治すのに重要な部分です。

外腹斜筋(がいふくしゃきん)

お腹を上からぶら下げて保っている筋肉です。この部分を固めると、胃や腸の消化器系の障害を作ります。胃や腸の上に網状の筋肉あって、消化器がバラバラにならないようになっていて、その上に内腹斜筋があり更にその外側を守るよう外腹斜筋があります。また消化器系だけではなく、膵臓や、腎臓、肝臓といった臓器のある場所です。この筋肉が固まると、それらの臓器にも影響し、様々な病気を作ってしまいます。

人間の一番の大元といえるでしょう。神経は背中より前面に向かって伸びています。交感神経幹、腰神経叢、仙骨神経叢と大事な神経が走っています。

腹直筋(ふくちょくきん)

いわゆる腹筋で、多くの人がこの筋肉を固めています。あるいは間違った考え方をもってここを鍛え硬くしている人もいます。まずつくられる病気は、アレルギー、自律神経失調症、心臓病、高血圧、喘息、胃腸障害、咳、痰をつくります。うつ病などもつくります。この下には、下行大動脈、下行大静脈が走っていて、腹直筋のコリが、下部への血流を妨げ、脚部への血行を悪くして、糖尿病や冷え性などを起こしてしまいます。

腹横筋(ふくおうきん)

この筋肉は脚の付け根にあり、脚が固まって、つっぱって歩行するような人は、直ぐに固めてしまいます。ここが固まると、大腸の働きが悪くなり、便秘や下痢をもたらします。

錐体筋(すいたいきん)

膀胱や子宮を固めてしまいます。膀胱炎や子宮の病気などもこの筋肉が影響しています。

近くに腸腰筋 股関節もあり、この筋肉のコリは、下部の脚へ、大きく影響を与えます。リウマチの病気をもつ人は特に固まりがちです。

また糖尿病にも多大な影響を与えています。冷え性、脚の痺れ、脚の指の壊疽などもここが原因の走りです。以下の長内転筋(ちょうないてんきん)、短内転筋(たんないてんきん)、恥骨筋(ちこつきん)、大腿筋膜張筋(だいたいきんまくちょうきん)、薄筋(はくきん)は糖尿病、リウマチの病気に関っています。これらの筋肉のコリをとっていくと改善されていきます。

そしてこれらの筋肉の中には脚部への大腿動脈や大腿静脈がはしっています。血流を悪くしてしまうと、糖尿病やリウマチだけではなく、動脈硬化や高血圧、低血圧、冷え性、などをつくりだします。

大腿直筋(だいたいちょくきん)

脚をあげるために使う強い筋肉で硬くなりがちです。脚の病気をつくりだします。又、糖尿病やリウマチ、冷え性をつくる場所です。

梨状筋(りじょうきん)

座ると痛みが走ったり、歩行すると、ガクガクとなる場所です。

双子筋(そうしきん)

この筋肉も梨状筋と同様です。

大腿二頭筋(だいたいにとうきん)

長頭足部の長い筋肉で この筋肉が固まると、脚を真直ぐに伸ばせなくなります。歳を取ってくると、最初に老化していく筋肉で、下部への血行を悪くしてしまいます。この下には、大腿神経、坐骨神経が走っています。これらの神経をつぶしてしまうと痺れや、痛みを起こしてしまいます。

大腿二頭筋(だいたいにとうきん)

短頭歩行すると膝に痛みがはしります。曲げても痛みがでます。高血圧やリウマチの原因でもあります。

半腱様筋(はんけんようきん)

大腿二頭筋(だいたいにとうきん)長頭と同様の症状があります。

外側広筋(がいそくこうきん)

脚が全体に硬い人は必ずといったほど、ここを圧すると痛みを訴えます。糖尿病の人は顕著に反応します。膝がガクガクといった症状がでる場合、この筋肉が固まっています。

内側広筋(ないそくこうきん)

ここも外側広筋と同様の症状や病気につながりますが、

外側広筋と違うのは膝の内側に痛みがでます。太い静脈も走っていて、血行不良を起こしやすい場所です。そのために、下部への血行を悪くし、親指の根元部分を痩せさせ、外反母趾を作ります。

膝窩(しっか)

膝の皿の裏側が痛みます。高低差のある段差や階段の登り降りができなくなります。また高血圧の原因にもなります。この下には、けい骨神経が走っています。そのために特に痛みをつくります。

腓腹筋(ひふくきん)

ヒラメ筋の外側にあります。この筋肉のコリも、膝に痛みをつくる筋肉です。また足首が曲げにくくなります。

足底筋(そくていきん)

膝から足の底まで伸びている筋肉で、この筋肉が固まると、足底に痛みが走ります。

ヒラメ筋

この筋肉が固まると、足首が自由に廻すことができなくなります。固まり血行が悪くなると、足首や、甲が痩せてきます。

浅腓骨(せんひこつ)神経、深腓骨(しんひこつ)神経が走っています。

長指屈筋(ちょうしくっきん)

アキレス腱の内側にある筋肉で、足の指を動かすための筋肉です。この筋肉が固まると足の指が動かなくなります。コリを取るには、アキレス腱の下脇から取るようにします。

アキレス腱

ギリシャの不敗の勇士アキレスが、この腱を切られ、動けなくなったことから、勇士の名前をとって、アキレス腱と呼ばれるようになりました。極度に走ったり、過度に歩いたりすると、この場所にコリをつくります。

また冷たい水に長時間は入っていても同様のことが起こります。

この筋肉が固まると、前述のヒラメ筋などを固め易くします。膝裏全体の要というところです。この一番下に踵骨(しょうこつ)があります。

踵が痛む場合、踵骨(しょうこつ)そのものも原因ですが、アキレス腱が固まっているケースが多々あります。外側足底神経(がいそくそくていしんけい)が走っています。

長指伸筋(ちょうししんきん)

足の四指、五指に影響する筋肉です。固まると四指、五指を上に持ち上げるようなことが困難になります。コリをつくり固めると足指の壊疽などをつくります。

前脛骨筋(ぜんけいこっきん)

この筋肉の凝りは足第一指の部分に障害を作り、外反母趾などをつくります。

長母指伸筋(ちょうぼししんきん)

前脛骨筋より、やや深い位置に障害をつくります。甲も痩せてきます。

短拇指伸筋(たんぼししんきん)

ここのコリは拇指を上向きに伸ばしたときに痛みが起こります。やせ細ったり、壊疽ともなります。

母指外転筋(ぼしがいてんきん)

母指を動かす際に痛みが生じます。靴を履いていて親指が痛くなるのもここのコリが原因です。

短指伸筋(たんししんきん)

三指から五指まで影響します。

以上が全身の一部の筋肉にコリをつくった場合の、各部位における、病気や障害との関りを説明してきました。更に詳細を述べるとすると、一冊の本を作らざるをえません。だが細かく述べてみたところで、人の病気や症状のつくられ方は千差万別です。細かく言えば言うほど「この病気だからこの筋肉である」などと決めつけて捉えられがちです。原因を正しく掴み適切な施術を行っていくには、常に水平思考を心掛けて臨むことです。

前述したように、人間の身体は筋肉で覆われています。述べてきたもののほかに、見逃してはいけないのは各器官や臓器の筋肉の緊張やコリです。臓器や器官のコリは、そのものに直接影響していきます。脚の凝りや、腕のコリ、首筋のコリは、糖尿病や、心臓病、脳卒中などをつくっていきます。筋肉と病気の関連は私の見解です。現代医学と異なります。

これからの医学として、「コリの科学」をしっかりと身につけ、更に深めていくことが、私の使命と思っています。