力は空気量で変わる

呼吸に於ける空気の摂取量の違いで、力を出す際の強弱に影響することが分かりました。空気量が多いほど強い力が出ます。少ない空気量と大きく吸い込んだ空気量との差では数倍の差がつきます。ですから一回の呼吸でどれだけ多くの空気量を取り入れられるかが鍵となります。(力の強弱を機械的に計測していません)

浅い呼吸は筋肉を固める

一生で行う呼吸の回数は決められていて、早い呼吸をしていると長生きが出来ない。そして長息は長生きに通じると説く人もいました。この説をまともに信じたわけではありませんが、呼吸の長短が、人の寿命に関わっているのではないかと常々思っていました。

今回いろいろな検証を得て、呼吸が人間の寿命にどのような形で影響していくのか?それを理解することが出来ました。

まず、浅い呼吸をすると筋肉が緊張し、深い呼吸をすると筋肉は弛緩することが実験によって分かりました。ただ、「緊張する」「弛緩する」というその分岐点がどの辺にあるのかはまだ理解の域を超えています。

実験1

受けては拳を握り片手を出し、脚は押されないように構えます。それを押し手は片手の手を開き受け手の作っている拳を押します。そして強弱を測ります。

① 空気を少し吸って押します。

② 空気を深く吸って押します。

実験すれば①と②でその力の差を大きく感じるはずです。①より数倍の力を出す事が出来ます。

①の呼吸が浅い場合、筋肉が緊張していることが分かりました。全身が緊張しているの

で、押す力が発揮出来ないのです。何故このようなことが起きるのか?「使っている筋肉に力を加算することは出来ない」これは私の発見した定理です。

「一旦ある目的に使った筋肉は、それを中止して弛緩させない限り、次の目的のために使うことは出来ない。また使っている筋肉に、さらに力を加えようとしても力を加算することは出来ない」というものです。

身体を緊張させているといっても全ての筋肉が緊張している訳ではありません。ですから緊張していない筋肉を使うことは出来ますが、押そうとして使う筋肉としては充分ではありません。それで思うほどの力を出すことが出来ないのです。

②で深く息を吸い空気量を多く取り入れた時には筋肉が弛緩しています。大部分の筋肉が弛緩しているので、押そうとする時に充分に筋肉が使え、力が発揮出来るのです。

深い良い呼吸をするためには

深い呼吸をすることによって身体は弛緩しています。緊張しないということです。緊張が続けば筋肉は固まり「コリ」を作り上げていきます。「コリ」は病気の元ですから、常に身体の筋肉が弛緩していることは、病気を作らないことに繋がります。それが深い呼吸をすることだけで出来るとすれば、こんな素晴らしいことはありません。

普通、人は1分間に14,5回の呼吸を繰り返しています。これを少なくとも4,5回に出来るとゆっくりとした呼吸になり、また深い呼吸をすることが出来ます。

「呼吸は吐くのが大事」であると多くの人が説いています。私は「吸うのがもっと大事」であると言うことにしています。悪いものを吐き出すようにするのも大事なのですが、吸う時には緊張しがちな筋肉を、緊張させないようにして吸い込んでいくことも大切なのです。

間違った呼吸法が多い

深い呼吸をするためには、ただ深い呼吸をするのでは、ただの深呼吸になってしまいます。深い呼吸が継続的に行われるようにするためには、呼吸法を用いることが必要です。

過去にも現在も巷に多くの呼吸法が存在します。それぞれ長所を述べていますが、これなら良いのではないかと思える呼吸法は見当たりません。というか、身体を壊しかねないトンデモナイ呼吸法を、実践推奨している所もあります。

またそれらの多くの呼吸法は腹式呼吸法をベースにしています。私は「複式呼吸は間違っている」とかねがね腹式呼吸の非を説いてきました。しかし多くの人に、「腹式呼吸は良いもの」と刻み込まれた考えを、「それは間違っていますよ」と説くのは中々骨が折れるもので、いちいち「何故駄目なのか」を説明しなくてはなりません。

またここでそれを反復することになるのでしょうが、呼吸は呼吸筋を使って呼吸するというのが正しく、腹で呼吸するというのは間違っています。腹の腹筋は呼吸をするための筋肉ではありません。腹筋は非常に強い筋肉で、腹筋を使用すると、多くの筋肉に影響を与え緊張させてしまいます。

腹式呼吸は、息を吸う際に腹を大きく膨らませ、吐く時にへこまします。息を吸うとき、ただでさえ筋肉が緊張しがちなところへ、腹を膨らませ腹筋を使うことでより強く緊張を誘います。また腹を膨らませると息を大きく吸い込めそうですが、実際は大した量を吸い込める訳ではありませんが、ただ実行している人には「大きく吸い込んでいる」と錯覚をさせてしまうのでしょう。

横隔膜が下がり息を吸い込みます。これも実際は間違っています。横隔膜は上がったり下がったりしません。胸郭が上下することで横隔膜が膨らんだり萎んだりしている訳で、横隔膜の根元は一定の位置についています。

腹式呼吸は腹を膨らませることで、横隔膜を下げるという考え方ですが、腹を膨らませる方向と横隔膜を下げるというのは、90度方向が違い、ベクトルが違うのです。随所に書いていますが、腹式呼吸を考えた人は、胸が固まり胸を動かして呼吸が出来なくなった人が考えた呼吸であると推測します。

私の勧める呼吸法

呼吸筋とは胸郭とそれを構成している胸筋、肋間筋を言います。これらの筋肉は呼吸をするための筋肉ですから、この筋肉を使って呼吸をする分には、他の筋肉の緊張を誘うことはありません。言い換えれば、呼吸するたびに筋肉が緊張し固まることはないのです。

横隔膜の底部は固定されています。そして肋骨と肋骨の間にある肋間筋や胸を覆っている胸筋が動き、横隔膜を上に引っ張り息を吸うことになります。そして呼吸筋を緩め下に落ちて息が吐き出されます。これが正しい呼吸のシステムです。

息を吸うとき、横隔膜が下がるという感覚を持つことは非常に難しいことです。横隔膜が上がっているとしか通常は思えないはずです。その感覚が正しいのです。腹式呼吸にあるように、腹を膨らませ、横隔膜が下にさがるという理論を裏づける感覚を持てる訳がないのです。貴方の感覚が正しいのです。

重複すれば、下に固定された横隔膜を上に引き上げることで、息が入ってきて、下にさがることで息が吐き出されるのです。

胸式呼吸は呼吸が浅く良くないと多くの人が思っています。しかし呼吸は胸で行うのが正しいのです。呼吸が浅くなってしまうのは、胸の筋肉が固まっていて自由に動かないからなのです。深い呼吸をするためには、胸筋や肋間筋のコリを取り柔らかくして、自由に動けるようにさせなくてはいけません。こうすると深い呼吸が出来るようになります。

実験2

前述した力比べで検証してみましょう。

③ 腹式呼吸で大きく腹を膨らませ、へこまし2,3回呼吸をしたのち直に押してみます。

④ 胸式呼吸で胸を上下左右に大きく動かし2,3回呼吸をしたのち直に押してみます。

力の差を大きく感じたことと思います。前者では力がはいりませんが、その数倍も力を出せたと後者では感じたはずです。

実験3

写真は、後ろから抱き抱えて持ち上げているものですが、1の写真では足が床より持ち上がっていますが、2の写真では床に足が付いていて持ち上がっていません。1は息を浅く吸った後持ち上げたもので、2は息を深く吸って持ち上げたものです。

1では軽く持ち上がったのに、2では持ち上げられません。何故このような差が出たのでしょうか?

1では呼吸が浅いために身体全体が緊張して硬くなっています。それに対して2では深い呼吸をしたので身体全体が弛緩しています。そのために1の緊張した身体を抱えた時、それに反応してさらに硬くなって持ちやすくなり簡単に持ち上げられるのですが、2の弛緩した身体は抱えても筋肉が反応せず、持ち上げても、当たっている部分の筋肉が伸びて上に上がるだけなので持ち上げることが出来ないのです。上げている人は「重くなった」と感じていますが、急に体重が増える訳ではありません。2の写真で、呼吸を深くすると筋肉が弛緩するということが解ったのではないでしょうか。

呼吸筋を使って呼吸することによって、身体に緊張をつくることが少なくなります。身体に良い呼吸をするためには絶対不可欠な呼吸法なのです。

呼吸を止めることは死ぬまでありません。その呼吸が正しく行われるか行われないかでは、大きく寿命に関わってきます。生老病死、生きて死ぬことは誰でも平等に訪れますが、その間病気をして苦しみ老いさばらえて死ぬのでは、最悪の人生を送ることになります。呼吸をただ深くしていくことでそれが避けられるかもしれません。やってみる価値があると思うのですが、如何ですか。