病気や疾患の全ては筋肉のコリが原因です。ならいかにコリをとっていくかということが大事な問題です。
一般的に、指圧、揉み療治、マッサージ、整体などで、コリを取ると考えてきました。かっての私もその様な時期があったように思います。そのような手法でいくらやってもコリが取れないので、「気」を用いて取ってきました。
硬く固まった筋肉をほぐしていこうとすると、どうしても圧して崩そうとか、揉んでほぐすという気持ちが起こります。これが間違いでした。
筋肉は刺激を受けると緊張します。このことが大きな問題だったのです。ちょいと触られただけでも緊張します。その度合いは人によって違ってきます。ですから、ただ圧したり、揉んだり、マッサージをしたりすると筋肉は硬く張るように緊張するのです。つまり圧した場合、その力に対応するように筋肉を固めてガードするように緊張するのです。揉んでも、その揉みに対して筋肉を固めて緊張します。これを、時間をかけて行うと、ガードするために緊張し続け結果固まり、筋肉は元の状態に戻らなくなります。
指圧や揉み療治を受けると後で揉み戻しがきます。これは力を加えられ緊張を強いられたために後で筋肉が固まってくるからなのです。
これでは筋肉のコリを取るどころか、コリを更に作り上げられてしまいます。施術を受けている時には、人の手で触れられ動かされるので、筋肉が発熱し、気持ち良くなりますが、終わって暫くすると、筋肉は冷えてきて固まってくるのです。
筋肉を刺激しないようするには、筋肉が条件反射的に反応出来ないような力で対応していくと、筋肉は緊張しませんので、コリをほぐすことができます。
このような手法をマスターするには、まず、筋肉の特性を充分に理解することが要です。
筋肉の特性
では筋肉の特性とは何でしょうか。またどのようなものがあるのでしょうか。いくつかあげていきます。
○刺激を受けると緊張する。
刺激とは、筋肉に対しての直接的な刺激だけではなく、思い、匂い、色の波動、音、視覚。つまりは五感に感じること全てです。
○緊張が続くと固まる。
筋肉をつくっている筋繊維、それを束ねているのが筋束、緊張すると筋繊維が収縮します。その状態のままにしておくと筋繊維が伸びなくなります。力を発するとき、単独の筋繊維の力では不足するので、隣あっている筋繊維とくっ付きより力を発揮していきます。くっ付くのは筋繊維を覆っている筋膜という膜がくっ付きあい一つになります。緊張を続けていると収縮した筋繊維同士のくっ付いている筋膜が剥がれなくなり、つまり癒着し固まってしまうのです。
○冷えると固まる。
人間の身体はその殆んどがタンパク質で出来ています。筋肉はタンパクの集合体と思えば良い訳です。タンパク質は冷えれば固まります。焼いた肉を想像すればわかるでしょう。温かいうちは柔らかい肉も冷めて冷たくなれば硬くなります。
○温めても固まる。
では温めれば良いのか。単純に考えてはいけません。肉も煮過ぎればこわく硬くなってしまいます。このように考えると適温は人間の体温、36.5度となります。携帯カイロも長時間付けていると筋肉は固まってしまいます。
○筋肉に力を入れて使っている時に、同じ筋肉に更なる力を加えることは出来ない。
力を入れて使った筋肉を弛緩させるには、その力を発揮したときに使った筋肉と対立する筋肉、対立筋を使うことが必要ですが、その対立筋を使わなかった場合には、ひとりでに緩んでくるのを待つしかありません。その時間は、筋肉の緊張状態、力の入れ具合、過去に固まっていたかいないかの条件が加わり一定ではありません。力強く握った拳が弛緩する場合、最低でも3秒くらいはかかります。
筋肉が弛緩しきれない時に、次の力を加えても筋繊維は収縮することが出来ません。つまり力を加算することが出来ないのです。
○筋肉は連鎖反応をつくる。
筋肉は単独で動くことは少ない。必ずどこかの筋肉と連動して動きます。たとえば腕を動かした時に、身体全体の筋肉を緊張させている人も珍しくありません。筋肉が緩んでいる人はその度合いが低くなります。筋肉と筋肉をつないでいるものに膠原繊維というものあって筋肉が連動して動くような役割をしています。また腱も違った方法で筋肉を連動させていきます。これらの繊維や腱も硬く固めてしまうと、自由性がなくなり、単一な動きとなり、いたずらに連動を大きくしてしまいます。
○筋肉の細かい動きは小脳がコントロールする。
筋肉の細かい動き、力をコントロールしたり、微小な動きをコントロールしたりします。動きを訓練していくと、小脳が発達していき微小な細かい動きなどをコントロールできるようになります。
○同一の筋肉は同時に2つ方向に力を発揮するのは難しい。
同一の筋肉が、違う方向の動きをつくることは非常に難しいことですが、筋肉を意識し微妙な動きをマスターすると出来るようになります。筋肉の筋節ごとに変えられるようになります。
○筋肉は前の状態に戻ろうとする働きがある。
筋肉は前の状態に戻ろうとする働きがあります。またこの働きがなくなった場合不都合なことが起きてきます。たとえば、変な格好をした場合、元に戻る働きがなかったとしたら、その前の姿勢に戻れなくなります。筋肉のコリをほぐしていく段階で、これが一番厄介で、ですから出来るだけ前の状態からかけ離れた状態にして置かないとすっかり元に戻ってしまうことになります。施術者の腕にいかかってくるところです。
○筋肉は過去を記憶する。
この解説は他の文章で書いています。そちらを参照してください。
○水筋肉
筋肉は水を含みやすいことが解っています。腎機能を落としたりすると、排泄されなくてはいけない水が筋肉の中に含んで水筋肉(私の造語)になってしまいます。このようになると筋肉の本来の働きが出来なくなってきます。
○筋肉は常に動かしていないと固まる。
筋肉を丸っきり動かさないでいると固まってきます。筋肉を動かすことで発熱します。それがなくなると冷えて固まってきます。
筋肉には以上のような特性があります。「コリをとればいいんだ」と単純に考えてもそう簡単にはいきません。これから先は手法の問題でしょう。
コリを取っていくための手法
コリを取るための手法にはいくつかの禁じ手があります。
○力を入れてはいけない。
○腕に力を入れてはいけない。
○無造作に強く触れてはいけない。
○接点を動かしてはいけない。
○首筋などの部位は力を入れて5秒以上圧してはいけない。
等々のやってはならない手法があります。人の身体は微妙に反応します。その反応をゼロしなくては良い施術は出来ません。
筋肉を押したり、揉んだりしますと、筋肉は緊張します、また痛みがあればより以上に緊張します。
一時的に押して潰れてなくなったようにみえますが、後で元に戻ってしまいます。一時的な時間は、その筋肉の出来上がった条件にもより格差があり、五分、一〇分であったり、一日であったり二日であったりいろいろですが、元に戻ってしまいます。
刺激を与えたり、緊張を与えた筋肉は、むしろ前にあった筋肉より、深い「コリ」をつくるときもあります。
筋肉の「コリ」をとるには、溶けるように取ることが必要なのです。
私の施術に於いて、時々痛みを与えるときがありますが、それはそこに被施術者側の集中力を促し、自己治癒力を増すために行うもので、決して、固まった筋肉を押しつぶそうとか、揉んで取ってしまおうという発想ではありません。
固まった筋肉に、炁を送り、その力でとることなのです。但しその手法の中には、いろいろなテクニックがあり、押すことや揉むことと、どう違いがあるのかは、他の章で詳しく説明していきます。