たん吸引ミス

 

1月11日付けの読売新聞に、たん(以後痰と表記)吸引ミスに対しての判決が降り、病院側に1億5千3百万円の支払い命令が出た事件のニュースがあった。

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痰が詰まった時の処置として、吸引器のカテーテルの先端を乱暴に扱って痰を吸引しているナースが目に付く。時には出血までさせてしまうナースもいる。事故が起きても不思議のない医療現場である。

そもそも論でいえば、気道に穴を開けて吸引器を取り付けること事態がそもそもの姑息な手段。気道が詰まって呼吸が出来なくなったら気道を確保することが本来の治療ではないのか。「何ともいやはや」の姑息療法だ。

技量不足で気道を確保できず、止むを得ず吸引器を取り付けたなら、痰が出ないようにする。それが最初にすべきことだ。まぁそれができれば吸引器を取り付ける必要はない訳だが。これでは鶏と卵理論になってしまう。

 

根本を直そうとせずに装置を取り付ける。そんな医療が現代医療の主流である。それを先端医療と思い込んではいないだろうか?

 

吸引器を取り付ける前に気道を確保する。簡単なことだが、薬と手術という方法しか持ち合わせがない現代医療には無理なようだ。

薬で気道を拡げることは所詮無理。だから手術をして装置を取り付けるしかない。と、決め込み、器具が開発されたのだろう。その時点では画期的なことだったのかも知れないが、発想の全てが対症療法的である。

 

何故気道が詰まるのか?

気道の周りには胸鎖乳突筋、胸骨舌骨筋という筋肉がある。その筋肉が固まると気道を圧し潰してしまう。それが気道狭窄である。

その気道狭窄を直すには、筋肉を解すという技術さえあれば、簡単なことである。

気道が詰まった原因を考えずに、穴を明けて空気を通すというのは、あまりにも単純発想。直す訳ではないから、いつになってもその装置を外す事が出来ない。それが現在の医療現場である。

 

痰は何故つくられるのか?

現代医学は痰を、異物をからめとって外界に捨てるための粘液。としている。

しかし、それは違う。細胞に傷がつけられると、傷の部分を修復するために粘液が出てくる。それが塊となって出るのが痰である。

鼻や口からウイルスや煤塵が侵入したらどうなるか?それらによって気道や食道を傷つけられば、その傷口を粘液が出て修復する。その粘液が塊となって痰として出て来る。

 

気道が塞がっている原因は、咽喉にあるバルブが周囲の筋肉のコリによって圧迫されて狭まっているからである。その筋肉は胸鎖乳突筋や胸骨舌骨筋である。それらを解せば気道は確保される。

吸引器は、咽喉のバルブの下の気道、食道部分に穴を明けてカテーテルを通すものである。カテーテルの周りの筋肉は硬くなっている。その状態のとき、嚥下したり首を動かしたりすれば、カテーテルの周りの気道に傷口がつく。痰の吸引の際にも気道を傷つける。

傷ができれば自動的に粘液が出て修復されていくそれが痰として出てくる。重複するが、吸引器の周りの筋肉が軟らかければ傷はつかず痰は出てこない。

私の患者さんには、吸引のためのカテーテルの入っている部分の筋肉を和らげるようにしている。それで痰は出なくなる。すると痰の吸引もしなくなるから更に痰は出なくなってくるが、時間が経つと筋肉はまた硬くなってくるので、痰がつくられ始める。

   多くの病院では、痰が詰まってはいけないと、痰があろうが無かろうが定期的に吸引を行なっている。それ事態は悪いことではないように思えるが、乱暴な操作で気道を傷つけてしまうのは何ともいただけない。

2019年1月16日