馬鹿は風邪を引かない ― 身体の感覚と風邪の不思議

「馬鹿は風邪を引かない」ということわざがあります。

もちろん、この言葉を文字どおり受け取れば、大変失礼な表現です。しかし本来は、「細かいことを気にせず、おおらかな人は風邪を引きにくい」、あるいは「風邪を引いても気づきにくい」という意味で使われてきました。

江戸時代には、「阿保は風邪を引かぬ」「阿呆風邪ひかぬ」といった表現が使われており、昔から人々の生活の中で語り継がれてきた言葉です。

現代では、ストレスと免疫機能の関係から説明されることもあります。強いストレスが続くと身体の調整機能が乱れやすくなり、反対に精神的に安定している人は身体の状態を保ちやすいという考え方です。

しかし私は、長年の施術経験を通して、風邪という現象について、もう一つ別の視点があるのではないかと考えるようになりました。

七十年以上風邪を引かなかった人

私が診てきた方の中に、七十年以上、一度も風邪を引いたことがなく、頭痛にも悩まされたことがないという方がおられました。

新型コロナウイルス感染症が世界中に広がった時期にも、その方は感染することなく過ごされました。

ところが、ある症状を改善するために施術を続け、神経の働きや身体の感覚が変化していく中で、大きな変化が起こりました。

それまで経験したことがなかった風邪の症状を感じるようになり、肩こりや頭痛まで現れたのです。

私はこの経験を通して、ある疑問を持つようになりました。

「風邪とは、本当に単純に免疫力が低下した時だけに起こるものなのだろうか」

という疑問です。

私が考える風邪の仕組み

一般的には、風邪はウイルスなどの病原体が身体に侵入し、免疫反応が起こることで発症すると説明されます。

もちろん、ウイルスの存在は風邪に関係しています。

しかし私は、同じウイルスに接触しても、症状の出方には大きな個人差があることに注目しています。

私たちの身体には、口腔内や鼻、腸などに多くの常在菌が存在しています。

これらの微生物は、単なる害になる存在ではなく、長い時間をかけて私たちの身体と共存してきました。身体は、外から入ってくるものに対して、免疫だけでなく、さまざまな防御の仕組みを備えています。

しかし、鼻や喉などの組織が慢性的な緊張状態にあり、柔軟性を失っている場合、外からの刺激に対して過敏に反応しやすくなるのではないかと私は考えています。

その結果、鼻では鼻水、喉では咳、さらに反応が広がることで発熱、頭痛、身体のだるさなど、私たちが「風邪」と呼んでいる症状が現れるのではないでしょうか。

だからといって大騒ぎすることはない。

鼻水は、胸鎖乳突筋の停止部(耳下)コリ・咳は胸鎖乳突筋の喉ぼとけのわき側のコリその他機に咳でつくったコリ・発熱は胸鎖乳突筋の中央部のコリ・頭痛は発熱の部位に加えて胸鎖乳突筋の内、外側のコリ、体のだるさは、脚のコリを解せば解消していく。

 

身体の感覚が戻るということ

以前の章でも述べたように、神経の働きが低下している人は、痛みや違和感を十分に感じ取れない場合があります。

反対に、神経の働きが正常になると、それまで気づかなかった身体の変化を感じるようになることがあります。

七十年以上風邪を引かなかった方が、身体の感覚が変化した後に初めて風邪を経験したことも、身体の感じ取る力が変わった一例ではないかと私は考えています。

身体には記憶があるのではないか

私は長年、多くの施術を行う中で、身体には過去の経験が何らかの形で残っているのではないかと感じることがありました。

何年も乗っていなかった自転車に再び乗れることや、久しぶりに楽器を演奏できることを、私たちは「身体が覚えている」と表現します。

また、施術中に身体へ触れたことをきっかけに、過去の感情がよみがえり、涙を流された方もおられました。

その仕組みが現在の科学ですべて解明されているわけではありません。

しかし私は、筋肉や身体の組織には、過去に受けた刺激や経験が何らかの形で残っている可能性があると考えています。

もし身体に記憶のような働きがあるとすれば、風邪についても同じことが考えられます。

一度経験した刺激に対して身体が適応し、過剰な反応を起こしにくくなることもあるのではないでしょうか。

これは、現時点では私自身の仮説です。

しかし、長年の施術経験の中で、私はその可能性を強く感じています。

まとめ

風邪は一般的に「免疫力が低下した時に起こるもの」と説明されることが多くあります。

しかし私は、風邪の症状が現れる背景には、免疫だけではなく、筋肉の状態、神経の働き、身体が刺激を感じ取る能力など、さまざまな要素が関係しているのではないかと考えています。

健康を保つために大切なのは、身体を無理に強くすることではありません。

筋肉を正常な状態に保ち、血液循環を良くし、身体が本来持っている調整機能が働きやすい環境をつくることです。

私たちは「記憶」は脳だけの働きだと考えがちです。

しかし、もし筋肉や身体そのものにも、過去の経験を刻む仕組みがあるとしたら、健康や病気に対する見方は大きく変わる可能性があります。

私は長年の施術経験を通して、その可能性を感じています。

そして、風邪もまた、身体全体の状態と深く関わっている現象の一つではないかと考えています。

2026/07/18

眞々田昭司

 

2026/07/15

眞々田昭司