ゴースト肩コリ
妙な言葉が出てきたものである。朝のNHKの番組を観ていて知った言葉である。
痛みのある場所ではなく、他の場所を刺激されたときに感じる肩コリの事を「ゴースト肩コリ」と、言うらしい。また、刺激をして痛みを誘う所をトリガーポイントと言うようだ。トリガーと言えば引き金の事である。
この場合の痛みの解説では、最初に肩コリの痛みを感じていたときに、他の場所にもコリが出来て痛みを感じるようになると、その信号が脳に両方とも届き、脳はどちらであるか分からなくなってしまい、普段肩コリの痛みは感じていないのに、他の場所を刺激されたときに、肩コリの痛みを感じる。と、言うのである。 故にトリガーポイントのコリを取れば肩コリも無くなるという。
さらに番組では、トリガーポイントのコリの取り方について、整体師が登場しての説明があった。
手の届かない所のトリガーポイントのコリは、タオルを結んで丸くして、その上にコリのある部位を当てて動かせば取れるという。
この整体師は、圧したり揉んだりすればコリが取れる。と思ってその方法を紹介したのであろうが、コリを単純に圧したり揉んだりすれば却って助長させてしまう事を知らないようだ。3000年以上も前の考え方のままである。
このような最悪な方法でトリガーポイントを取っていたとして、もしそこに、何らかの病気の原因があったとしたら、病気をより深刻化させてしまう恐れがある。また、そのような例は数え切れないほどある。訳も分からずやたらと圧したり揉んだりしてはいけない。
そして、更に番組では駄目押しの方法が続く。上腕三頭筋にコリが出来たら、腕を水平よりやや上に上げて掌(てのひら)を上にし、肘を曲げ伸ばしすると、上腕三頭筋の裏側にある上腕二頭筋が鍛えられてバランスが取れて上腕三頭筋のコリが無くなる。と、いうものである。
これは上腕三頭筋のコリをそのままにして、その逆側の上腕二頭筋にもコリをつくり表裏同じような状態にしてしまう事である。とても、コリを取る、無くす、というレベルのものではない。筋肉の特性を知らない医師の思い付き療法としか言いようがない。
これが公共のNHKの番組であるから始末が悪い。観ている人のほとんどは信じてしまうだろう。筋肉に付いて良く解っていない人が安易に想像したものを、公共の電波に乗せるのは如何なものだろうか。そして、「ゴースト肩コリ」などとふざけた名称を用いるべきではない。
ゴースト肩コリという現症を説明してみよう
腰に痛みを感じるから腰痛というが、その原因の多くは臀部にある。臀部を圧すると臀部と腰部に痛みを感じるが、臀部にある原因のコリを取ると臀部の痛みも腰の痛みも無くなっていく。 しかし、それを知らない整形外科医たちは、椎間板ヘルニアとか脊柱管狭窄症の病名を付け手術してしまう。それで治れば問題はないが、その事で一生不具者になってしまった人もいる。 痛みが、刺激する部位ではなく他の部位に感じる。これは脳の問題ではなく神経の問題である。
締まるように固まった筋肉が、その中にある神経を圧迫したとき痺れをつくる。それが進行すると麻痺が起きてくる。 また、筋肉を刺激したり圧したりすると筋肉は収縮し神経を圧迫するが、その神経が、硬く固まった筋肉の間に挟まれていた場合痛みを感じる。
同じように筋肉が固まって起きる症状でも、以上のように二つの違った症状がつくられる。それは、筋肉のコリの形成の違いにある。
任意のコリをつくっている部位を圧したり刺激すると、それに対して筋肉はデフェンスしようと緊張して反応する。そしてそれは多くの場合全身を緊張させる。筋肉が弛緩している部位は反応しないが、筋肉にコリをつくって緊張している部位は反応を起こし収縮する。
そしてその収縮が筋肉の中にある神経を圧迫して痛みをつくっていく。これが西洋医学者が言っているゴースト肩コリをつくるメカニズムである。以上のような理由からトリガーポイントは一定でなく無数に存在する。脳の問題ではない。
そして痛みは、コリがあり緊張度の強い方が先に感じるもので、その強い痛みが無くなれば次の緊張度の強い場所が感じてくる。これは脳の問題である。
ここまで説明すればお解りいただけだろう。故に、西洋医学者の言うトリガーポイントのコリを取ったとしても、その部位のコリが無くなり、そこを圧しても肩の痛みは出てこないだけで、肩コリは残っているので根本的な解決にはならない。トリガーポイントのコリを先に取るのではなく、まず肩コリを取るべきである。
まだまだ西洋医学では「筋肉と痛み」「筋肉と病気」についての知識は乏しいようである。
コリを取るには、それなりの技術を身につけなくてはならない。その様な事より、姿勢を正しくし、「コリが取れる」と自分に暗示をかける方が余程効果がある。時間の有る方は、私のMMSテクニークを実践する事をお勧めした。