ガンと血の巡り
施術の現場で感じた一つの考え方
ガンは血液循環と深く関係していると私は考えている。
血液が十分に流れなくなった筋肉細胞はコリを生じ、そのコリが解けないまま凝固し、周囲を取り囲むようにして次第に大きくなっていく。やがてその表層は血液からの栄養を受け取れなくなり、飢餓状態に陥る。
飢餓状態となった細胞は、生き延びようとして血液を求め、周囲の筋肉細胞へ侵食していく。最初は小さなたんぱく質の塊であったものが、次第に拡大していく。これが私の仮説である。
もしこの飢餓状態の細胞に再び血液が流れ始めれば、組織は徐々に変化し、正常な細胞へと戻っていく可能性があると考えている。
ガンを形成する細胞組織にも、微小な血管である毛細血管を通して血液は流れている。しかし、何らかの理由でその微小血管の血液循環が滞ることによって、ガンは発生すると私は考えている。
であるならば、その循環を妨げている原因を取り除くことができれば、ガンは次第に退縮し、消えていくのではないだろうか。
〈症例〉
Sさんは乳ガンを患っており、週に1回のペースで施術に通っていた。
上半身のコリをほぐし、乳ガンの部位も慎重に解して柔らかくしていくのだが、次に来院する頃には元の状態に戻っており、毎回同じことの繰り返しであった。ただし、ガンそのものは進行せず、状態は維持されていた。
ある時、Sさんの脚が異常に硬くなっていることが気になり、施術時間の大半を使って脚を集中的にほぐした。施術後、肩や腹部、そしてガンの部位に触れてみると、驚くほど柔らかく変化していた。
次の施術時には再び脚は硬くなっていたが、脚をほぐす施術を何度か繰り返した。しかし、このままでは根本的な改善には至らないと感じた。脚を硬くしてしまう原因そのものをやめてもらわなければ、この悪循環は断ち切れないのではないかと考えた。
そこで私はSさんに尋ねた。
「脚を固くしている原因があるように感じるのですが、何か運動などはされていますか。例えば、ウォーキングやランニングなどは?」
Sさんはこう答えた。
「ウォーキングやランニングはしていませんが、自転車には乗っています。」
「自転車は毎日ですか? どれくらいの時間、距離を乗っていますか?」
このやり取りで、私は原因を理解した。
Sさんは、保育園への送り迎えや仕事での移動を、電動アシスト自転車で行い、広範囲を移動していた。その結果、脚や臀部、背
中の筋肉が固まり、さらにハンドルに体重をかけることで、腕や脊
柱起立筋にも強い緊張が生じていた。
自転車は、小さなサドルに腰掛け、上半身を前に倒し、ハンドルに突っ張った腕で体を支えながら、脚でペダルを踏んで進む。この姿勢と動作が、脚・臀部・背中の筋肉を固めてしまうのである。
Sさんの脚は、一般に「鍛えられた脚」と言われる状態だった。常識的には健康的で、病気とは無縁だと思われがちである。しかし、その考えを否定する私の意見は、残念ながら受け入れてもらえなかった。
それから3か月後、サドルに接する臀部と脚に強烈な痛みが生じ、歩行が困難な状態になってしまった。
脚の筋肉と血液循環
私は自転車に乗ること自体を否定しているわけではない。
電動アシスト車を使い、脚や臀部に負担をかけない乗り方もあるし、長距離を使用した後に適切なケアを行えば、筋肉を過度に固めずに済む。
しかしSさんは、説明後も自転車に乗り続け、最終的に乗れなくなるまでやめることはなかった。
最後まで回復させてあげられなかったことは、今でも残念に思っている。ただ、この経験は私にとって大きな学びとなった。
微小血管の血液循環を改善するためには様々な方法が考えられるが、私の経験上、「脚の筋肉をほぐすこと」が最も効果的であると分かった。
脚の筋肉がほぐれ始めると、それまで冷たかった足先や手先がすぐに温かくなる。冷え性が一気に改善されるのである。
では、なぜ脚の筋肉をほぐすと微小血管の血液循環が良くなるのだろうか。
それは血液の流れる「速度」に関係している。
心臓から送り出された血液は秒速約1メートルの速度を持つが、
微小血管に至る頃には、正常な状態でも秒速約5ミリメートルまで
低下する。これは直径約1/1000ミリメートルの血管に血液を流す
限界に近い速度である。
大動脈の直径は約30ミリメートルで、そこから分岐した大腿動脈は約15ミリメートルになる。単純に断面積で考えると、大腿動脈を流れる血液の速度は半分に落ちる。
もし脚の筋肉のコリによって血流がさらに半減すると、微小血管に届く頃には秒速2.5ミリメートル程度になってしまう。この速度では、毛細血管に血液を送り込む力が失われてしまう。
これこそが、私が脚の筋肉のコリを重要視している理由である。
結論
一つのコリが全体の血液循環を損ない、全身の細胞一つ一つに十分な血液が行き渡らなくなると、細胞の働きや代謝が低下し、さまざまな症状や病気が生じてくる。それは、ガンが形成される過程においても同じである。
逆説的に言えば、全身の細胞に十分な血液が流れていれば、病気
は起こりにくい。これが私の結論である。
西洋医学は、症状という「結果」を主に見ており、ガンにおいてもステージ2やステージ4といった分類を論じるにとどまっている。しかし、本当に重要なのは「なぜガンになるのか」という原因の追究である。
原因を突き止めることこそが、本物の治療である。
「たまたまうまくいった」では、それは科学とは言えない。
2026/01/13
眞々田昭司




