医療でつくられる病気
まったくひどい話である。医療によって病気がつくられていく。
Nさん72歳。女性。東京都在住。
Nさんは、右肩と腕に激痛が走り、痛みの為に就眠出来ない状態が続き、1年半前に近くの病院の整形外科を受診した。
数種の検査を受けたが病名は不明、原因も不明。痛み止めの薬が処方され、通院して電気治療機を当てていた。
通院して半年程経った頃頻尿になった。同病院の泌尿器科に診察を受けた結果「過(か)活動(かつどう)膀胱炎(ぼうこうえん)」と診断された。そして薬が処方された。
Nさんは、忠実に整形外科の痛み止めと過活動膀胱炎の薬を飲み続けてきたが、肩、腕の痛みも取れず、頻尿も改善されないまま1年半を過ぎても激痛に苦しんでいる。長期間の治療に不信を覚えて、私のクリニックに来られた。これが経過である。
つくられた過活動膀胱炎
老廃物や毒素を含んだ血液は、腎臓の糸球体という毛細血管の集まりのような所を通って濾過(ろか)される。そして腎盂(じんう)を経て再生できるものは元の血液の中に戻され、捨てて良いものだけが尿管を通って膀胱に運こばれ、尿道から尿として外部に排泄されていく。これが泌尿器の仕組みである。
老廃物を含んだ血液を濾過している分には腎臓にはさほど問題は生じない。しかし、薬などを飲んでその毒素を含んだ血液が流れてくると、その微細な刺激で腎臓は固まり、糸球体は硬くなり萎縮する為に濾過能力が著しく衰えていく。固まって目詰まりしたフィルターに汚水処理をさせるようなもので、排水処理に時間が掛かってくる。フィルターなら掃除すれば良いが、糸球体を掃除する事は出来ない。腎臓は働きつめとなり、その分腎臓に負担が掛かってくる。時間が掛かるという事は、膀胱には少しずつしか尿は溜まらないことになる。
膀胱に尿がある程度溜まると膀胱は膨らみ、膀胱の平滑筋を刺激する。「尿が溜まっているよ。そろそろ排泄してもいい頃」と、脳に情報を送り、それを受けた脳は膀胱の弁を開いて排尿していく。
通常、膀胱に尿が400CCから500CC(成人男子の量で女性はこれより少ない)溜まった時点でその機能が起きるが、薬によって膀胱の平滑筋を固めてコリをつくって常に緊張している。それ故に、膀胱に少量の尿が溜まると「もう満杯だよ」という緊張を平滑筋に与える為に、間違った情報を脳に伝えてしまい、排尿を促してしまう。その事が頻繁に行われるのが過活動膀胱で、炎症を伴ったものが過活動膀胱炎である。
この過活動膀胱炎は、肩、腕の痛みを取るために処方された薬によってつくられたものである。消炎鎮痛剤の毒素を消すために一生懸命働いた腎臓が壊れ、膀胱が固まってしまった為である。これを放っておけば腎不全を起こしかねないし、最悪は人工透析というパターンになり兼ねない。
これは正(まさ)しく「肩や腕の痛みを取る」という簡単な事が出来ない整形外科医が作り出した医原病である。
高血圧の降圧剤や糖尿病の薬を長年飲み続けている人にも、同様な事が起きてくる。その事を、どれだけの人が気付いているだろうか?
自分では何もせずに「薬を飲めば治る」という安易な理由があって、薬がもてはやされるのであろうが、「薬は毒ですよ!怖いですよ!」と、一言苦言を呈したい。
件の女性の病気は五十肩と言われるもの。これを治すことはMMS治療者にとっては極初歩的ものである。治療法については、私の著書MMSに詳しく述べているので参照下さい。
五十肩を治すのは簡単なこと、しかし、駄目になった腎臓を修復させていくには時間が掛かる。拙い医療が招いた事と笑ってはいられない。