40年見えなかった。今見えている。

 

常に白いガラス板があって光が差し込んでいる。眩しさから避けるにはサングラスをかけるしかない。
40年間。この世界で生きてきた。でも今、白いガラス板は取り払われ景色が見えるようになった。文字も見えている。諦めていた世界が現れてきた。
これを奇跡と言ってはいけない。

Tさんは、脳梗塞の後遺症で右半身が麻痺し、腕、脚は全く動かず、言語障害を持っていた。2日間2時間ずつの施術をし、腕も脚も動かせるようになり、普通に会話ができるようになった。(2017/09/20)

「先生、俺が治ってきてるんだから、今度、目の不自由な人を連れてくるから頼むよ」
と、言ってTさんは、遠方の地に帰っていった。

つい最近(2017/10/26)その言葉のように、目の不自由な人を連れてきた。仮にTTさんとしておこう。
TTさんの病名は網膜色素変性症。余程関心のある方でない限り知らない病気だ。私も知っていたのは病名だけ。詳細は知識の外である。
「先生、治せんだろう」
Tさんは気軽に言った。
網膜色素変性症。どんな病気なのか?詳しいことを知らない私と、このこのコラムを読んでもらうための予備知識として、皆さんにも知っていただきたい。ウィキペディアからの引用である。

網膜色素変性症( pigmentary degeneration of the retina)
眼科疾患の一つで、中途失明の3大原因の一つ
概要
長い年月をかけて網膜の視細胞が退行変性していき、主に進行性夜盲、視野狭窄(求心性、輪状暗点、地図状暗点、中心暗点)、羞明(しゅうめい)を認める疾患である。進行度合や症状には大きな個人差がある。1996年に厚生省から難病指定を受ける。成人中途失明原因3位と言われていたが、正確には成人中途視覚障害原因3位というのが正しい。様々な治療法が研究されており、現時点では点眼での網膜神経保護、遺伝子治療、網膜幹細胞移植、人工網膜などの研究が全世界で行われているものの、根本的な治療法が見つかっていない。治療法の確立を目指す全国組織として、患者、支援者、学術研究者が三位一体となった日本網膜色素変性症協会(JRPS)がある。
原因
遺伝性疾患であるが、孤(こ)発(はつ)例も多く見られる。本疾患の遺伝形式には、常染色体優性遺伝、常染色体劣性遺伝、伴性劣性遺伝の三つのタイプがある。
統計
編集3000~4000人に1人の割合で発症する。国内には約5万人、世界では150万人以上の患者がいると言われている。
(以上はウィキペディアから引用)
*(孤発とは、時々発生すること、散発的に発生すること、医学分野用語)

TTさん、目以外悪いところはなさそうだ。
「目の前に白いガラスがあり、その白い部分が無くなれば見えるような気がしています。しかし、その白いガラス板に明るい光が当たると眩しくてサングラスを掛けなくてはいられなくなります。この状態が40年間続いています。」
これがTTさんの説明である。さて、これを如何に治していくか?

原因も解らない。正体が分からない。未知。これまでに幾つかの難病を治してきた経験が 、直感とひらめきを信じろと言っている。理論は後から付ければ良い。
白いガラス板があって、それを取れば見える気がする。TTさんの言葉通りかも知れない。
白いガラス板が光だけを吸収し網膜に照射するために眩しい。と、考えられるが、白いガラス板はどのようにすれば取れるのか?

腎臓をまず解していく。落ちている腎機能を高めるために。肩の僧帽筋、棘上筋、首の胸鎖乳突筋、胸骨舌骨筋、頭板状筋、頭半棘筋を解していく。これは目への血流を良くするためで目や耳の治療には欠かせない。顔面の筋肉も軟らかくまっていく。
ここまで進めていくと
「先生、少しガラス板が薄くなって眩しさが減ってきました。」
変化が出てきたようだ。

いよいよ直接目へのアタック。目の焦点を合わせていくのは眼輪筋が主、眉毛下の筋肉、額の筋肉も作用している。この三つの筋肉が固まると、目が開けにくくなる。まずこの三つの筋肉を解していくことにする。ただし、眼輪筋のコリを解すときには少々痛みが生じる。
「今までに味わったことのない痛さです。」
と、多くの人が表現している。ただ、そんなに時間が掛からずに取れるので本の少しの我慢が必要となる。すっかり解れると、明るくなり、焦点が合い目がスッキリとしてくる。
皆さんも、眉毛の処に温かいオシボリを当てて確かめてみては。一時的にだが、筋肉が緩み同じような効果が出て疑似体験ができる。

眼輪筋の奥を更に解していくと、矢張り激痛を味わうポイントがある。そして、その痛みは、前頭葉全体に及んでいく。(ポイントを軽く圧する程度で、強い力で圧すようなことはしていない。指圧のように圧すことだけはしないで欲しい。)
「先生助けてくれ。指を折られても俺は悲鳴をあげない自信はあるけどこの痛みは耐えられない。」
この悲鳴を聞いて続けるほど私はサディスティックではない。
「どう変化があった。」
「先生、少し見えるようになってきました。細かい部分は判りませんが景色は分かります。」
「眩しいですか。」
「いえ、眩しくありません。蛍光灯の蛍光管が見えています。」
見えてきたようだ。同時に白いガラス板が消えている。眩しさもなくなった。

施術を終えて、私のクリニックを手探りではなく、目で見て歩けるようになった。勿論サングラスは付けていない。
1日目はこれで終了した。TTさんは興奮して大騒ぎにはしゃいで帰っていった。

2日目。戻ってはいない。更に良くなっているようだ。視力を上げる施術をしていくと、大きな文字は読めるようになった。後は少しずつ視力をあげていけば良さそうだ。
40年間視力を失っていた目。 TTさんは、家に帰って家族や友達に会って、当分はしゃぐだろう。その姿が私の網膜前のスクリーンに浮かんでいる。

過去に、網膜色素変性症が治った。と、いう話は聞いていない。私が最初に治したのだろうか?

どんな病気も、原因を探りその原因を正していけば治る。但し、遺伝による。というような原因は論外である。

私の疑問
失明。明かりを失うこと。でも、網膜色素変性症のように眩しくていられないほどいられないほどの明かりがある。これを失明というのだろうか。
辞林には、視力を失うこと。全盲とある。全盲とは、両眼ともに完全に障害されていて明暗もわからない状態。視力0の状態をいうらしい。よく解らない。解る人がいたら教えて欲しい。

失明とは明かりを失うと書く。白いガラス板の目は、明かりを失っていない。視力を失っているだけのいるだけのこと、それなら治せる。私の勝手な解釈である。

施術後記
網膜の前に仮装のスクリーンが存在すると、景色や陰影は映らす、そのスクリーンを透過する強い光だけが網膜に届いてくるので眩しく感じる。しかし、そのスクリーンの透明度が高くなれば、全てが透過するので眩しさはなくなる。というのが現在の仮説である。

現代医学での原因は、遺伝性疾患と孤発例であるとしているが、どう考えてもこれは原因ではない。単なる調査結果だ。この説明からすればTTさんは孤発例になる。

現代医学の原因説に一言
病気の原因とした場合、原因とは直接その病態をなすものでなくてはならない。遺伝が目を見えなくしているというのは何とも解し難い。原因と検査結果や調査結果を取り違えている。

遺伝原因説
「あの病気は遺伝なんだってさ」遺伝がその原因。というのをよく聞く。
両親や祖父、祖母、親戚の人。その人たちの中に同じ病気の人がいた。「これが原因だ」と、言われれば「遺伝だから仕方ない」と諦めるしかなくなる。これでは、原因を取り除くことはできない。

人は必ず細胞の中に、両親、祖父母、あるいは祖先の遺伝子を持って生まれてくる。血統である。
しかし、血統は引き継いでも病気は引き継がない。これが私の考え方である。
お父さんやお爺ちゃん、お母さんやお婆ちゃんにそっくりになっていく人がいる。これは明らかに遺伝的なものである。それが同じような体型をつくりだし、同じような行動をする。同じような食べ物を食していく。
ここまで似通ってくれば、同じような病気をつくりやすくしてしまうことは確かなこと。しかし、だからといって確実にそうなることではない。
環境や動作、行動、姿勢、食習慣が違えば変わってくる。
「母もお婆ちゃんも乳がんだったから、私も乳がんになってしまうかしら」家(うち)はガンの系統だからと、ガンになっていない乳房を切り落としてしまった女優さんがいたが、何ともいやはやである。
私の父はリウマチを患っていた。だからと言って私がリウマチになるとは思わない。それは、リウマチの原因が解っているからだ。
原因があって結果がある。結果を原因にしてどうするのか?

2017/11/14
眞々田昭司