本当の「健脚」とは

「健脚」とは、大辞林によれば「足が丈夫で長く歩けること。また、その足」とある。
なるほど、たくさん歩ける足は「元気な証拠」。私たちの多くは、そう信じて疑わない。

けれども「健」という字には「健康」「すこやか」「体が丈夫」といった意味がある。
つまり“脚が丈夫であること”は“健康であること”と、私たちはどこかで思い込んでいるのだ。

だから「最近ちょっと運動不足だな」と思うと、まず「歩こう」「走ろう」となる。
駅の階段を上るとき、エスカレーターに乗るのをためらい、つい「歩かなくちゃ」と自分を叱咤する。
もしそれを誰かに見られでもしたら、「歳だね」なんて言われるかもしれない。
そんなふうに、「脚が丈夫なら健康」という考え方が、今では常識になってしまっている。

病院で「糖尿病の予備軍」と言われれば、医師は「糖分を控え、よく歩くことです」とアドバイスする。
黒く日焼けした肌に、引き締まった脚。これが“健康の証”のように見える。
「毎日歩いているから日焼けしたんですよ」と言う人もいる。
しかし、本当にそうだろうか?

じつは、日に当たらない場所まで黒ずんでいたりしないだろうか。
それは“日焼け”ではなく、筋肉が固く締まりすぎて血流が滞り、代謝が落ちているサインかもしれない。
見た目はたくましくても、内側では冷えが進んでいる──そんな脚が少なくない。

固くなった筋肉は、血液の通り道をせばめる。
結果、血がめぐらず、脚は冷え、疲れやすくなる。
ところが、その筋肉をゆるめてあげると、驚くほど早く温かさが戻ってくるのだ。

ネットでは「毎日20〜30分走れば脂肪が燃えて太りにくい体に」といった記事をよく見かける。
だが実際には、脂肪が燃えているのではなく、筋肉が老化し、しぼんでいるだけのことも多い。
MMSの立場から言えば、そんな“頑張りすぎ”の運動にはレッドカードを出したい。

脚は、固く締まっているよりも、むしろ柔らかく、弾むようでなければならない。
柔らかい脚は血の巡りを良くし、毛細血管の隅々まで酸素と栄養を届ける。
血液が全身をめぐると、細胞は活発に働き、体は自然と健康を保つ。
逆に、脚を固めてしまうような歩き方を続ければ、寿命を削ることにもなりかねない。

「でも、そんなにゆるくしていたら歩けなくなるんじゃ?」
──そんな心配は無用だ。
正しい歩き方を知り、脚をやわらかく使えば、むしろ軽やかに歩けるようになる。

大切なのは、「歩くこと」そのものではなく、「どう歩くか」。
ただやみくもに距離を稼ぐことが健康ではない。
脚が本来のやわらかさを取り戻すとき、全身が若返り、真の意味での「健脚」が生まれる。

健康とは、硬さではなく、しなやかさの中にある。
このコラムをきっかけに、“本当の健脚”をめざしてみてはいかがだろうか。

 

2025・10・19

眞々田昭司