降圧剤と筋肉の関係

――施術現場から見えてくるもの

降圧剤を服用している方に施術を行うとき、私が気になることがあります。

それは、外側の筋肉(アウトマッスル)の状態です。

施術の際には、筋肉の硬さや張りを触診しながら、どこに硬直が起こっているのかを探していきます。しかし、降圧剤を長期間服用している方では、アウトマッスルが「ぶよぶよ」とした感触になっており、本来なら触診によって確認できる筋肉の硬直が分かりにくいことがあります。

すると、硬直している場所を直接見つけて解していくことが難しくなります。

仕方なく、まず「ぶよぶよ」した筋肉を本来の状態に近づけるところから始めなければならず、施術に余分な時間が必要になります。

また、私の施術経験では、こうした筋肉の状態には個人差があるものの、降圧剤を長期間服用している方ほど、身体の一部に強い硬さが残っているように感じることがあります。

ここで、私は一つの仮説を立てています。

アウトマッスルが本来の働きを十分に発揮できなくなれば、身体は別の筋肉によってその働きを補おうとするのではないか、ということです。

その役割を担うことになるのがインナーマッスルです。

しかし、インナーマッスルは本来、アウトマッスルの仕事を代わりに行うためにつくられているわけではありません。そのため、長期間にわたって代償的な働きを続ければ、インナーマッスルにも負担がかかり、結果として硬直を強める可能性があります。

さらに、私が施術の現場で気になっているのが、筋肉が「ぶよぶよ」とした状態になっている方の皮膚の状態です。

そのような方では、肌がくすんで見え、活力が乏しいように感じることがあります。

もちろん、これは私の施術経験から得ている観察であり、降圧剤そのものが皮膚のくすみを直接引き起こすと断定するものではありません。

しかし、筋肉の働き、血液循環、代謝、そして皮膚の状態には何らかの関連があるのではないか――私はそのように考えています。

降圧剤は何をしているのか

現在使用されている降圧剤には、いくつかの種類があります。

たとえば、カルシウム拮抗薬、ARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)、ACE阻害薬、α遮断薬などです。

代表的な薬剤の作用を簡単に整理すると、

カルシウム拮抗薬
血管平滑筋へのカルシウム流入を抑え、血管を拡張させることで血圧を下げます。

ARB(カンデサルタンなど)
血管を収縮させるアンジオテンシンⅡの作用を受容体の段階で抑え、血管を拡張させます。

ACE阻害薬
アンジオテンシンⅡが作られる過程に関わるACEという酵素を阻害し、血管収縮を抑えます。

α遮断薬
交感神経のα受容体を遮断することで、血管の収縮を抑えます。

ここで重要なのは、これらの薬剤がそれぞれ異なる仕組みで血圧を下げているということです。

「血管を広げる」とは何なのか

ここからが、MMSの視点から考えてみたいところです。

筋肉が収縮するときにはカルシウムイオンが重要な役割を果たします。ただし、すべての筋肉が同じ仕組みで収縮しているわけではありません。

特に血管を構成する平滑筋と、身体を動かす骨格筋では、カルシウムの利用の仕組みが異なります。

したがって、

「カルシウムの働きを抑える薬を使えば、身体中の筋肉が力を出せなくなる」

と単純に考えることはできません。

しかし、ここで私が注目しているのは薬そのものの作用だけではありません。

血管の内側だけを見ていて、本当に血管全体の状態を理解できるのだろうか。

という疑問です。

血管は身体の中に単独で存在しているわけではありません。

その周囲には筋肉や結合組織など、さまざまな組織があります。

もし血管の周囲に強い筋緊張や硬直が存在しているとすれば、血管そのものを拡張させることだけで、周囲の組織による圧迫まで十分に解消できるのでしょうか。

ここに、MMSとして考えるべき課題があります。

「血管を広げる」だけで十分なのか

「血管を収縮させないこと」と「血管を十分に広げること」は、同じことではありません。

薬によって血管平滑筋の収縮を抑えることができても、その血管を取り巻く周囲の組織に強い緊張が存在しているなら、血管を取り巻く環境そのものにも目を向ける必要があります。

私は、ここに施術の役割があるのではないかと考えています。

つまり、

血管だけを見るのではなく、血管を取り巻いている筋肉や組織の状態を見る。

そして、その周囲に存在する過剰な筋緊張を見つけ、正常な状態に戻していく。

これは、薬によって血圧をコントロールする考え方とは、まったく別の視点です。

MMSの基本に戻る

ここで大切なのは、「降圧剤を飲んでいるから薬をやめればよい」という単純な話にしないことです。

降圧剤には脳卒中などの重大な病気を予防する目的があり、自己判断で中止することはできません。

だからこそ、MMSでは薬を否定するのではなく、

「なぜ血圧が高くなっているのか」
「血管だけでなく、その周囲の筋肉はどのような状態なのか」
「筋肉の緊張を正常化することで、身体にどのような変化が起こるのか」

という視点から考えていく必要があります。

そして、この考え方を実際の施術に結びつけるには、確かな触診技術が必要になります。

「硬いところを押せばよい」のではありません。

見えないところにある筋肉の緊張を感じ取り、どの筋肉が本来の働きを失い、どの筋肉がそれを補っているのかを考えながら施術する。

そこまでできて、初めてMMSの基本に戻ることができます。

薬を飲んでいる人の身体だからこそ、薬だけを見るのではなく、その人の身体そのものを見る。

それが、私が施術現場から考えているMMSの一つの視点です。