強直性脊椎炎

スポーツのし過ぎが病気を作る。まだこの事実を知る人は少ない。スポーツは健康をつくると思っている人がほとんどだろう。嘗て私もテニスに夢中になっていた時代があった。腰痛の防止と頑健な肉体をつくる為に始めた。しかしそれが意に反す事であることに気づくのに14、5年の歳月を要した。その間健康を維持する、身体を作るという方法がスポーツから気功、武術へと変わっていった。またその期間は独自の医学を確立するまでの時間であった。

「スポーツは身体に悪い」余程うまいケアをしない限りスポーツは身体を壊す。また病気を作る原因になる。

33歳の男性を紹介しよう。強直性脊椎炎という難病を抱えた人である。

筋肉が強張り、自由な動きを出来なくなり、激烈な痛みを伴う病気である。未だ完治した例はなく難病に指定されている。全国には○○人の患者数を数える。

現代医学の解釈は知らないが、腱や膠原繊維が強張って全身の筋肉に影響を及ぼしていく病気で、その腱や膠原繊維の強張りを取っていけば治っていく。

この男性を治し初めて2年半以上になるが、最初の半年は、数種の薬による影響を取る事で費やされた。特に筋肉弛緩剤の影響が強い。筋肉弛緩剤は筋肉をいたずらに柔らかくさせてしまう。全身の筋肉が柔らかくなってしまうために原因となっている筋肉のコリが探せない。 痛みは、筋肉が締まって硬くなり、内包している神経を圧迫してつくっている。 薬の開発者の真意はよく分からないが、多分に固まった筋肉を柔らかくすれば治るものと思ってのことだろう。しかし薬で表面的に筋肉をブヨブヨにしても、筋肉の中に張りめぐらされている神経を圧迫している部分は緩んでいないので痛みが消える訳はない。

ステロイドや弛緩剤を止めてもらって半年後に原因が見えてきた。またそれからの半年は硬くなった腱や筋肉を柔らかくする。そしてまた硬く戻るのでまた柔らかくするという繰り返しをしてきた。その間に徐々に痛みは軽減され、動きにも自由性が出てきた。現在では痛みから解放されているが、まだ胸や脚に少し強張りを感じているといった状態である。

この人の場合、病気の原因と考えられるのは、過度のサッカーである。6年くらい夢中になってやっていたようである。しかしある時に突然腰痛に襲われ歩けなくなった。そしてサッカーを止めた。

腰痛の原因は、腎臓の下にある仙棘筋を固めた事だ。X線の検査では、左仙棘筋が真っ白に写り石灰化していた。走る、蹴るという動きの中で作られたものだろう。

この仙棘筋中には、腎臓から膀胱まで尿を運ぶ為の尿管がある。この尿管を筋肉がきつく固め細めて通りを悪くしてしまっている。腎臓は左右にあるので片側の腎臓で補っていて辛うじて腎機能傷害にはなっていなかったが「水筋肉」なっていた。

「水筋肉」と言うのは私の造語で、腎機能が落ち、排泄されるべき水分が排泄されず筋肉の中に含まれ、筋肉がブヨブヨになってしまった状態をいいます。水筋肉になると筋肉本来の働きが出来なくなってしまう。

筋肉は概ね一本の筋繊維から出来ている。それが何本か集まり筋束をつくっている。筋繊維はそれぞれ筋膜で包まれている。力を発揮しようとするとき、筋繊維が何本かくっつき集まって作動する。隣の筋繊維と筋膜どうしがくっつく。これが離れなくなった状態が「コリ」ということになる。

水筋肉になると筋繊維の部分も水で犯され筋膜の練性も失われ隣の筋繊維とくっつかなくなり、筋繊維が単独で力を発揮する事になる。筋繊維が固まり硬くなれば緊張収縮、伸張が出来なくなる。筋肉が一つに纏まらず、バラバラになってしまうと解釈すると解りやすいだろうか。

この人の場合、仙棘筋を固めて水筋肉を作り出した。今までサッカーで過激に動かして作られた体は、筋肉が硬くなっており、その筋肉の中にある血管、特に毛細血管は締め付けるように潰されている。サッカーを止め動かさなくなった時点から、血行不良がおき、筋肉細胞が代謝されずに老化していった。その状態の時に水筋肉になってしまった。

スポーツを行って作った筋肉は硬い。いきなりスポーツを止めて動かなくなると血流が悪くなり代謝が落ちる。そしてますます硬くなり締まっていく。特に強い腱は収縮度が大きく周りの筋肉までも取り込み固めていく。結果、硬く締め付けられた筋肉の中の神経を圧迫し痛みをつくった。と推論される。

現在、石灰化した仙棘筋が普通の筋肉の状態になり、水筋肉度も減少した。強張りも消えてきている。後は正常な筋肉に戻すだけだ。

良かれと思っているスポーツが体に悪いということを実証する一つの例を述べた。常識で通っていることも正しいとは限らない。変えることも必要である。