緩めるという言葉をよく武術雑誌に見られます。しかし本当にわかっていて使っている言葉なのでしょうか。
ただ力を抜くこととは違う意味で使っているのなら、しっかり緩めることを身につけて語るべきです。
私はこのように捉えています。緩めるとは、力を入れず、かといって脱力せず、
いつでも瞬時の動きに反応できる常態にあるからだの状態であると。
筋肉を緩めた常態で押された場合、筋肉の緊張をつくらないで反応できるかどうかです。
押されたときに筋肉が反応するようでは、緩んだ状態ではありません。
それは、それまでは力を抜いていたが、次には力を入れて反応したということで、緩めた常態であるとはいえません。
どんなことが起きようと筋肉を緊張させないで対応できる身体が緩んでいる状態です。
次のような実験をしてみてください。まず少し湿ったタオルを用意してください。
①試験者と被試験者がタオルの両端を持って対峙します。
②試験者は被試験者を引っ張ってみます。なかなか引けないがタオルが伸びきったときに軽く引っ張ることが出来ます。
③次に試験者にタオルの先端を握ってもらった常態でタオルを右なり左にしっかりと巻いてください。
そして引っ張ります。簡単に引く事が出来ると思います。
④最後はきつく巻かれたタオルを少し巻き戻してください。そして引っ張りますがなかなか引き事が出来ないと思います。
ここで気がついた方は武術を科学的に見られるひとです。
タオルを人間の手と考えたとき、
②は試験者が脱力した常態にありましたが、最後は引かれたことに反応して筋肉が緊張してしまい引っ張られてしまいました。
③は手や腕に力が入った状態です。ただし引かれた力に対応して筋肉が緊張していったのではなく、最初から力が入っている状態です。
④は筋肉が緩んでいる状態です。かといって脱力はしていません。いつでも力に対して対応できるものをもっている状態です。
緩めるとは④のような状態にあり、きわめて脱力に近い状態です。
思いもかけずに人に驚かせられたときに、「ピクッ」と驚いたとしたら、貴方は力が入って常に緊張している状態にあるからです。
しばらくたって反応するのは鈍感なだけです。驚かされても平常でいられなくてはいけません。
身体から必要以上の力が抜けて緊張せずにいられれば、緩んでいる状態といえます。
相手が驚かそうとして手を出したときに、何気なくかわすことが出来たらパーフェクトです。
緩んでいるというのは、常に臨機応変に対応できる状態でいるということです。
常に緩めることを意識して生活していると身についてきます。
最初は1,2分おきに緩めと身体に言い聞かせるクセをつけそれを続けていくと、
その言い聞かせる時間が長くなり、どんどんと緩めることが身についてきます。